参加者の戸惑い
前向きな人ばかりに 候補者辞退、広く認める
9月8日の大阪地裁。60代の男性は仕事を休み、裁判員候補者として選任手続きに出向いた。
「一度はやってみたかった。覚せい剤は一般にまん延し、なじみが薄い話ではない。水際で止めるのが大事」。既に審理対象が覚せい剤密輸事件と知り、予習してきたようだ。

裁判員選任手続きに出向き、取材に応じる候補者=2009年9月1日、青森地裁前
花柄のシャツを着た大阪府守口市の60代の主婦も「酒井法子被告の事件もあり、どういうルートで国内に入るのか関心はある」と裁判員になることに前向きだった。
▽辞退多く再抽出も
25地裁(支部含む)で28日までに終了した裁判員裁判計37件で、各裁判所はまず裁判員候補者名簿から70~100人程度をくじで選んだが、調査票や質問票のやりとりで辞退を求めた人などを除き、実際に呼び出したのは30~51人となった。
辞退を希望せず、少なくとも裁判員になっても構わないと考えている人が多いとみられ、選任手続きへの出席率は77~100%に上っている。
また選任手続き当日、辞退を申し出た候補者も認められるケースがほとんど。政令に定められた「裁判員になると、身体上、精神上、経済上の重大な不利益が生ずる」という理由で、裁判にかかわるのが不安な人や、人を裁くことに抵抗がある人も辞退が許可されている可能性がある。
「呼び出し状の送付から裁判までの期間が短くなってしまい、大変申し訳ない」。熊本地裁は9月18日、こんなコメントを発表した。
10月14~16日の裁判員裁判に向け、候補者名簿から90人を選んだが、調査票や質問票で次々に辞退を認めるなどしたところ、呼び出す候補者が少なくなってしまい、名簿から新たに40人を抽出せざるを得なくなったという。結局、42人を呼び出し、選任手続きには39人(93%)が出席した。
▽「判断は冷静に」
「やりたかった。社内でもアドバイスできるかなと思っていた」。神戸地裁の裁判員候補者だった会社役員は選ばれず、残念そう。
裁判員を経験した人も記者会見などで「何か新しいものが出発するときに遭遇するのがわたしの運命。やりたくないとは思わなかった」(大阪地裁、80代男性)や「自分の考えを表現できるチャンスなので、嫌という感じはしなかった」(福島地裁郡山支部、男性)などと振り返っている。
前向きな候補者から選任された裁判員。ただ裁判員経験者の中には「話し合いが苦手な人はつらいだろう」と心配する人もいる。裁判員裁判を控えた弁護士は「熱心なのはいいが、冷静に判断できるかどうかが問題だ」と話している。
(共同通信社 2009年10月31日)

