裁判員をよむ

連載企画

参加者の戸惑い

保護観察「それはいい」 犯罪実感、判例に違和感

 「これが現実なのか。普段ニュースで聞いていた事件は、実際はこんなひどいものなのか」。ある地裁の裁判員経験者の男性は「犯罪」を初めて実感したという。

裁判員経験者らの会見

保護観察付き執行猶予の判決を言い渡した後、記者会見する山口地裁の裁判員経験者ら=2009年9月9日、山口市内

 同じ裁判で裁判員を務めた別の男性は「検察官の求刑を聞いた瞬間『そんなに軽くていいのか』と思った。評議室で見せられた同様の事件の判決例を見ても、ひどい事件が軽い刑だったりして不思議に感じた」と振り返る。この裁判では、被告に懲役10年を超える刑が言い渡された。

 ▽更生意志確かめる

 対照的に、刑の執行猶予に加え、保護観察官や保護司による指導・助言を受ける保護観察も付けた別の地裁の判決について、裁判員だった男性は次のように明かす。

 「執行猶予という話には普通になったが、意志が弱そうだから、悪い仲間と付き合って仕事をしなくなるのではないかとみんな不安を持った。とはいえ実刑にしたら、それこそ悪い連中と付き合う。裁判員の一人が『何かいい方法はないか』と尋ねたら、裁判長が保護観察について説明した。すると『それはいい』ということになった」

 判決に保護観察が付いた裁判では、裁判員が被告に更生の意志を確かめる質問が相次いだ。

 「人の手を借りて社会復帰していただきたい」(9月8日、山口地裁)

 「これからはそれ(パチンコ)はやらないですね。間違って判断したら世間さまに申し訳ないから聞いているんです」(9月8日、神戸地裁)

 「わたしが母親なら罪を受け止めて出直すという言葉を聞きたい」(10月6日、横浜地裁)

 こうした質問に、被告はそれぞれ反省や更生の決意を述べた。

 ▽制度理解し期待?

  27日までに終了した裁判員裁判は計36件(すべて被告は1人)で、執行猶予判決は9件。保護観察が付いたのはうち7件(78%)。これに対し、2007年に地裁・家裁の判決で執行猶予が付いた4万395人のうち保護観察付きは3180人(8%)にすぎない。

 「保護観察は生活環境がよくない場合などに付け、若い人が多い。保護観察中に罪を犯すと、もう執行猶予が付けられないので慎重に判断する」とベテランの裁判官。裁判員は被告に「次はないよ」というメッセージも伝えているようだ。

 一方、保護観察付き判決が続いていることに、ある保護観察官は「衛星利用測位システム(GPS)をつけているわけでもないし、24時間監視しているわけでもない。保護観察の中身を理解し、期待してくれているといいが…」と話している。


(共同通信社 2009年10月31日)


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裁判員制度とは

 有権者から無作為に選ばれた裁判員6人と裁判官3人が原則審理し、殺人など重大事件の被告が有罪かどうかを判断した上、有罪の場合は刑も決める。