候補者の見方
判決と結論同じ1人 異なる考え方どう生かす
毒物カレー事件、闇サイト殺人事件、夫殺害・遺体切断事件について、東京地裁などの裁判員候補者名簿に載っている2人ずつ計6人に公判の証拠や検察側・弁護側の主張を詳しく伝え、裁判員になったつもりで考えてもらった。3回にわたって紹介した6人の意見のうち、実際の判決と同じ結論は1人だけだった。
まず毒物カレー事件は自白などの直接証拠がなく、有罪かどうか判断が難しいケース。和歌山地裁、大阪高裁、最高裁はいずれも状況証拠から有罪と認定し、被告の死刑が確定している。
しかし話を聞いた男女2人は「無罪」と判断した。それぞれ「確かに怪しい」「限りなく有罪に近い」とは思ったが、男性は「自分の判断で被告の人生を変えてしまう。直接証拠がなければ有罪と決め付けられない」とし、女性は「有罪とするのに十分な証拠があるとは思えないから『疑わしきは罰せず』の原則に従う」と答えた。
2人とも無期懲役受刑者の再審開始が決まった足利事件を念頭に、慎重に判断したという。
闇サイト殺人事件は、殺害被害者1人で死刑を選択するかどうかが争われた。名古屋地裁判決は被告3人のうち2人を死刑、自首した1人を無期懲役としたが、意見を聞いた女性は全員死刑と判断した。「1人でも許せない。被害者の数や前例ではない」とし、全員に死刑を求める遺族の気持ちに心を動かされた。
一方、判決と同じ結論だった男性は遺族感情にウエートを置かず、再犯の可能性を重視した。
夫殺害・遺体切断事件の争点は、刑事責任能力の有無・程度。「心神喪失」として責任能力を否定した医師2人の精神鑑定結果を参考に判断するが、昨年4月の東京地裁判決は責任能力を全面的に認め、鑑定結果とは逆の見解を示した。
実は東京地裁判決の3日前、最高裁は責任能力が争われた別の事件の判決で、前提条件などにおかしな点がなければ「鑑定結果を尊重すべきだ」との基準を示し、精神医学という専門領域で裁判員が戸惑ったり「にわか精神科医」になったりしないよう配慮した判決と言われていた。
今回意見を聞いた2人は、責任能力が一部欠けた「心神耗弱」とした。鑑定結果は「心神喪失の『喪失』という言葉は、泥酔者が体の自由が利かない状態をイメージさせる」などとして受け入れず、最高裁の基準のようには判断しなかった。
6人の意見からは、従来の判決で示されてきた裁判官の考え方とは異なる「裁判員司法」の傾向をうかがわせた。3日から始まる裁判員裁判で、それがどう生かされていくかが注目される。
(共同通信社 2009年11月04日)

