47NEWS >  ニュース >  動画ニュース >  Route 66 >  おわりに

おわりに

 映画「トランザム7000」に魅せられ、車を運転する生活をずっと続けたいと思い、将来の夢を「タクシーの運転手」と書いた僕は、ありふれた学生生活を経て、なぜかマスコミ業界に就職し、20年選手の記者になっていた。まさかサラリーマンの身で、しかも、車とは直接は縁がない仕事なのに、それなりに長い日程のクルマ旅が実現できるとは想像もしなかった。

 「お正月の特集紙面で、シカゴからロサンゼルスまで、ルート66の走破をしてみたら、おもしろいかもしれません」

 新年記事の企画会議で、あまり深いことを考えずに言ったのがきっかけだったのだが、これが意外なほどすんなりと通った。
 その席で、50代の先輩記者たちが「ルート66」という言葉を聞いて目を輝かせたことを、僕は見逃さなかった。ルート66という言葉は、ある層には心をときめかせる魔力があるらしい。

 さて、どの新聞だってそうだが、お正月の特集記事には、「なぜ、その記事が必要なのか」という意味づけが必要だ。つまり、新しく迎えた2012年のスタートに、なぜルート66を紹介しなくてはならないのか。
 正直に告白すれば、全く考えてなかった。
 ただ、ぽろっと「ルート66」という言葉が出てしまい、会議に出ていた多くの人の心が反応してしまったのだ。

 出張を実現させるためには、ルート66と2012年との接点を見つけるしかない。
 調べてみると、実に奥深い道であることを遅まきながら知った。文豪スタインベックが代表作「怒りの葡萄」で、再生を求める「マザーロード」として描いたこと。アメリカンニューシネマの傑作映画「イージー・ライダー」で、ピーター・フォンダとデニス・ホッパーの主役2人がロックナンバー「ワイルドで行こう」をバックにバイクをぶっ飛ばしたのが、ルート66であったこと。ディズニーのアニメ映画「カーズ」は、古き良きアメリカの文化を色濃く残すルート66への愛から生まれたこと。

 そして、ついに発見した。
 60年代に放映されたテレビドラマ「ルート66」の日本での放映開始が1962年だったこと。ちょど半世紀前だったとは、キリがいい。しかも、現地には1950~60年代に栄えたモーテルやドライブインの跡が「遺跡」として残り、観光客の人気を集めているらしい。
 キャッチフレーズは「50年前にタイムスリップしよう」でいくか。

 何とか大義名分が整ったところで、旅には相棒が必要だ。
 「トランザム7000」でバンディットにスノーマンがいたように、なんて格好を付けなくても、4000キロの旅を私1人でやるなんて無理です、事故ります。写真も自慢できるような腕ではないし…ということで、相棒は写真家の中嶌英雄さんにお願いした。
 実はこの企画が通ったときから、不思議と中嶌さん以外の選択肢はないと思っていたのだ。

 中嶌さんは、僕より約20歳年上の団塊、つまり、ドラマの「ルート66」を見て、海の向こうのアメリカにあこがれを抱いて育った世代だ。彼は主にライブやミュージシャンのインタビューなど、音楽分野での撮影キャリアが長い。喜多郎さんや谷村新司さんをはじめ、彼のカメラの腕と人柄にほれこんだアーティストは多いと聞く。
 数年前に音楽担当記者だった僕は、フジロックフェスティバルなどの夏フェス取材で彼と同行したことがある。野外のフェスは雨に降られることはざらで、時には横からたたき付けるような大嵐に遭うこともある。どんな厳しい条件であっても、僕は中嶌さんが「いや」と断るのを見たことがない。「仕事があるってのは、うれしいことなんです」と降りしきる大雨の現場へ笑って出て行く彼を見て、逆境に強そうな人だなと感じていた。そんなさわやかなオーラを持つ彼とタッグを組みたかったのだ。

 中嶌さんを旅に誘うと、二つ返事で「行きます」。「苦しいかもしれませんよ」と慎重な僕に、「楽しめますよ、やるっきゃない」と頼もしい。打ち合わせで会ったとき「実は左ハンドルの車に乗ったことないんです」「英語、全くしゃべれないんですよ」と明るく言われ、ぞっとしたが…。

 でも、続く言葉がうれしかった。
 「あなたが僕を選んでくれたから、僕はこたえなきゃいけないんですよ」

 そのとき、思った。
 どんなことがあっても中嶌さんを守らねば。けがをさせない、コワイ目に遭わせない。
 その誓いだけは果たせて、ほっとしている。この日記では、彼のことを、親しみを込めてナカジマさんと書かせてもらった。

 ナカジマさんとは、一度もケンカはしなかった、と僕は記憶している。
 もちろん、緊張する場面は何度もあった。そんなとき、あるエッチな不祥事を起こした共通の知人、Z氏のことを唐突に話題に出し、「あいつはホントに、しょーがねーな」と言っては、一緒に笑い、場を乗り切った。Z氏本人がここで話題に出されていることは知るまいが、おかげで友情が続いたことを思うと、氏の存在はありがたかった。

 ナカジマさんの仕事仲間で、アメリカでの生活経験のある、フォトグラファーの畔柳ユキさんにも、とてもお世話になった。「管制官ユキ」の、インターネットを介した、的確で心のこもった遠隔ナビがなければ、僕らは、どこかで落とし穴にはまっていたかもしれない。

 ところで、レンタカー返却時の領収書を見ると、この旅のトータルの走行マイル数は2980マイル。
 メートル法に換算すると4795キロ。

 え? 4000キロじゃなかったっけ。
 
 そう、約800キロは行き止まりや道を間違えて道草を食った分ってこと。
 でも、終わってみると、この800キロが捨てがたい。楽しさと苦しさのエッセンスが凝縮されていたような気がする。このルート66を味わうには、それなりの「無駄」があり、それを楽しむ覚悟がないと、苦行になってしまう。

 旅の様子は、お正月の全国の新聞紙上でも伝えさせていただいた。中嶌氏撮影の、とっておきスーパーショットが何枚も紙面を飾っているはずだ。

 また、2月には東京・汐留の共同通信社1Fで中嶌さんの写真展を予定している。

 このつたない旅行記を読まれて、これからルート66走破に挑んでみたいと思う方がいたら、先輩面して、2つだけアドバイスさせてもらう。

 ・1人では行くな。相棒を探せ
 ・行き詰まったときは一緒に笑え

 では、Good Luck! 旅の成功を祈る 管制官タザワ

旅行記
旅行記

プロローグ

はじめに

イリノイ州

<1> 出だしから迷子
<2> 小さいのが、いいです
<3> 名物食堂
<4> 縦列駐車マイスター
<5> 序盤は飛ばす(ここから1日目)
<6> ナビが働かない
<7> 高速のわな
<8> ゲストブックの熱い言葉
<9> 合衆国のヒーロー
<10> 生きる理由
<11> 犬の歓迎

ミズーリ州

<12> トムとハックの川(ここから2日目)
<13> カメラを池に
<14> トラック野郎の味
<15> ドライブマナー
<16> クルマの神が
<17> 管制官ユキ(ここから3日目)
<18> 朝焼け浴びる大画面

カンザス州

<19> わずか21キロ
<20> 愛すべきキャラ

オクラホマ州

<21> 伝説のスター
<22> 巨大トーテムポール
<23> うれしい言葉
<24> 太陽が落ちてくる
<25> 孤独と自由(ここから4日目)
<26> マザーロード
<27> 綿畑と通行止め

テキサス州

<28> 58人の村
<29> 突き刺さる車
<30> ちょうど半分(ここから5日目)
<31> 元気の数値

ニューメキシコ州

<32> 車で歩く
<33> 青の泉
<34> 永ちゃんとアメリカ
<35> 親子の像
<36> ぶつけられた!(ここから6日目)
<37> 不吉な電子音
<38> 「通報されたいか」
<39> デッドエンド

アリゾナ州

<40> しつこい泥土
<41> 取り囲まれる
<42> おせっかい(ここから7日目)
<43> いいことが起きそう
<44> 隕石の跡
<45> 岩との会話
<46> シュウちゃんのこと
<47> 絶交と別れ
<48> 嵐の結婚式(ここから8日目)
<49> 飽きない夢
<50> 「カーズ」の町
<51> 陽気男
<52> 心のタイムスリップ
<53> 残る不安
<54> 手のひらに汗(ここから9日目)
<55> ガンマン登場

カリフォルニア州

<56> 白い恐怖
<57> 赤の鮮烈
<58> 映画の舞台
<59> 木賃宿
<60> ビリー・ザ・キッドの携帯電話(ここから10日目)
<61> 1号店
<62> ゴールの手前(ここから11日目)
<63> 東洋人の町
<64> 完走の意味
<65> 大平洋は青かった
<66> 幸せな光景

エピローグ

おわりに