10年02月07日 23:24
2月7日(90日目)「面白くない」(下)
澤野林太郎
ブリザードの後
新聞ができること。もうひとつは調査報道である。報道機関には、「警察に行っても捜査してくれない」「行政機関が動いてくれない」「どこの会社が入札で談合している」などなど多くの情報が寄せられる。私達は、この声に応えるためひとつひとつを丹念に自分で調べ上げていく。そして自分がおかしいと思ったことが事実であり報道すべきだと判断した場合、それを記事にする。知り合いの中日新聞の記者は、中央官庁の天下りを徹底的に暴いた。行政機関というお墨付きがないまま、途方がない時間をかけて自分の足で裏付けを取る。
澤野は、殺人容疑で逮捕された男と長い間、文通をしていた。拘置所で3回、面会した。警察はこの男は4人殺していると見ていたが結局、遺体も出ず殺人容疑は不起訴となった。詐欺罪で実刑となった男はアクリルで仕切られた面会室で「刑務所を出たらば事実を話そう。携帯に電話する」と言ってドアの奥に消えた。3年待った。電話はかかってこなかった。男は刑務所内でガンで死んだと後で聞いた。
ある大手製麺会社で「国産100%のそば粉使用」と記載されたそばに、中国産が混ざっているという情報があった。最新の分析機関の結果では、明らかに国産とは違う値を示していた。製麺会社幹部は、「どこかで混ざる可能性は排除できない」と居直った。指摘を受けた後の分析では、明らかにそば粉は国産100%の値に変わっていた。国産と外国産の価格差は2倍。これは記事にできなかった。うなぎ、はちみつ、たけのこでも同様のことがあった。
いずれも、待っていても捜査機関や行政機関が発表してはくれない。自分がやらなければ表に出ない話しだ。
「リーク」と「調査報道」。この2つは報道機関の2本柱だ。
「記事面白くないよ」。この問い掛けに私は、どう答えたらいいのだろうか。
澤野が住んでいる東京都江戸川区には「葛西新聞」というローカル新聞がある。ある日、小1の長男がうれしそうに新聞を見ていた。葛西臨海公園であったイベント記事の写真の中に長男が写っていたからだ。毎日届く朝日新聞をほとんど見ない妻は週一で来る葛西新聞でこのイベントを知った。
これまで新聞に記事を書かれると内容にもよるが、嫌がる人、怒る人がたくさんいた。現場では取材拒否をする人、名前を教えてくれない人が増えたような気がする。でもテレビや新聞って「出たらうれしい」という側面を忘れていたような気がする。
これはジャーナリズムではないかもしれない。しかし大衆迎合でもないと思う。
私はこれまで「これがニュースである」と決め付けてしまっていなかったのだろうか。「これが読者が求めている記事だ」と思って書いた記事は、本当に読者が求めていた記事だったのだろうか。私は検証をしてこなかった。
今回、南極で多くの隊員を新聞記事やブログで紹介し、出身地の地方テレビ局にも多く出演してもらった。ふるさとの放送局に笑顔で電話出演する隊員の姿を見て、新聞やテレビにはまだ「力」が残っていると感じた。
ブリザードはやんだ。午後はみんなで手作りギョウザ。
澤野林太郎| 02/07 | 23:24 | コメント (1) | コメントを書く



