10年02月07日 03:39
2月6日(89日目)「面白くない」(上)
澤野林太郎
ブリザード
ブログの愛読者の石田昌隊員に先日「この前の記事、面白くなかったよ」と言われた。ショックだったが、図星だった。実は、先日のある記事はいわゆるストック原稿だった。あまりネタがない日や帰りの船中用に何本か書きためていた。それを仕方なく出したのだから、指摘は的確だった。しかしこの発言は大きなヒントでもある。
南極観測とは話しがずれるが、新聞、情報、ニュースについて記させて頂きたい。
新聞は現在、売り上げ部数が減り続けている。原因は活字離れと人口減、そしてインターネット化である。今後、新聞を読んでいない世代が親になり、その家庭は新聞を取らなくなる。購読者が増えることはないだろう。
収入の2本柱である広告収入も激減している。景気も悪い。今後、折り込みチラシや新聞広告よりも有効で安価なインターネットの広告に取って代わられるだろう。
新聞社はあえいでいる。共同通信もあえいでいる。
新聞社が情報を紙だけでなく、インターネット上に流し始めてしばらく経った。ある新聞社では、全情報を見るには有料の会員登録をしなければならない。ある新聞社では、携帯電話で月に105円払えば見ることができる。何社かの新聞社があつまって比較できるようにしたり、誰でも過去のデータベースを使えるサービスを始めた。これらがビジネスモデルとしてうまくいっている話はあまり聞かない。
ただ状況が変わったということを私達は認識しなければならない。
情報は、かつては記者クラブが一元的に握っていた。記者クラブとは、新聞社や通信社、テレビ局などがつくった任意の団体で、総理官邸、内閣をはじめ、外務省、財務省、警視庁、各都道府県庁、都道府県警、市町村町などほとんどの官公庁の建物の中にある。そこに記者が毎日詰め、政治家、官僚、警察官、企業役員などから情報を得ていた。
澤野はかつてある官公庁の不祥事を取材していたとき、その報告書の紙を事前に入手するため奔走していた。朝出勤前に玄関外で待つ「朝回り」、昼官庁内で取材に行く「庁内回り」。そして夜、自宅前で帰りを待つ「夜回り」。内部情報をリークしてもらうために何時間も、何日間も、昼夜となくその人を待ち続けた。夜、気温は氷点下10度を下回っていた。今の南極より寒かった。別の官僚とは一緒に冬山に行き一緒にテントに泊まり、また別の官僚とは毎週日曜日、剣道の道場に車で迎え送りをして剣も交えた。ある官僚が最後、自宅の居間に澤野を招き入れてこういった。「あなたが落ちているものを拾うのは私には関係のないことだ」。彼は、明日発表の報告書をじゅうたんの上に置いた。紙の右上には、情報管理のための通し番号が記されていた。
翌朝、一面トップで記事が掲載された。しかし正式に発表された報告書には、記事になった部分が削除されていたことを私は決して忘れない。
そして今晩も日本中の多くの新聞記者が、取材先の家の前で寒さに震えながらネタ元の帰りを待っている。これは権力を監視するジャーナリズム本来の大切な役割だ。ぎりぎりのせめぎ合いの中で、権力との緊張関係が生まれる。
ただ私達は認識しなければならない。情報を取り巻く環境が変わったということを。新聞にはもっとやれることがある。
今日は、本吉隊長とシェフ2人によるにぎりずしパーティー。外はブリザード。
澤野林太郎| 02/07 | 03:39 | コメント (2) | コメントを書く
記者クラブですか…う~ん。
南極のブリザードはすごいのでしょうね。北海道も昨日今日とは風と雪がすごいです。昨日はすごく寒かったし。
投稿者 nyatch : 2010年02月07日 09:50
こんにちは。紹介されて辿りつきました。南極観測の様子が生活感のある目線で伝わってきて、公式発表的な記事と違って新鮮です。以下一般論です。憶測やバイアスのかかっていない文章は、ストレスなく読める。筆者が筆者として気持ちを忌憚無く表現した書き物には心が動く。つまり、「そのまま」が書いてあれば良いのでは。読み手をもっと信じてほしい。こういう見方、一方ではこういう考えがある、全体から見ればこういうレベルだ、など様々な視座があるはず。送り手は、それらを集め、列挙してくれるだけでも良い(スペースの都合がありそうだけど)。なぜならば、それだけが唯一、読み手にとって困難な作業だから。例えば、自分で自分のことを「ステキ」と言ったらどう思われるだろうか?自分は他人をして「ステキ」と言わしめるべく、様々に自分を見せる努力をするのがベターではなかろうか?問題かどうか読み手がよく分からないのに「問題だ」と答えありきに書く記事が世に多すぎて、年明けからいよいよ新聞を額面どおりに読めなくなってしまいました。これは書き手と読み手にとって大いに不幸なことだと思います。現場で奮闘する書き手の思いが果たされていないのであれば、なおのことです。なぜならば書き手なくして報道はありえないからです。今は伝え方に課題があるのではないでしょうか。読み手をもっと信じてほしい。
投稿者 ロケット : 2010年02月07日 22:53



