47NEWS >  共同ニュース >  医療・健康  >  医療新世紀 >  パンデミック想定見直しへ多様化する鳥ウイルスインフル対策で政府検討
医療新世紀
今週のニュース
2017.02.21

パンデミック想定見直しへ
多様化する鳥ウイルス
インフル対策で政府検討

 この冬、国内外で発生が相次ぐ鳥インフルエンザ。インフルエンザウイルスは変化しやすいため、人でのパンデミック(世界的大流行)につながるような変化の兆候はないか、慎重な監視が続く。一方、直近のパンデミック発生から8年近くが経過、警戒すべき鳥のウイルスも多様化するなど情勢は変化してきた。そうした中、日本のパンデミックの備えは現状のままでいいのかがクローズアップされつつある。

170221honki1.jpg
▽迅速な処分
 今冬の国内での鳥インフル(H5N6型)の拡大は昨年11月に始まった。九州、本州各地、北海道で野鳥の感染が続々に確認され、今年2月初旬には200件超に。養鶏場でも感染が見つかり鶏などの殺処分が行われたが、鳥インフルに詳しい河岡義裕東京大医科学研究所教授は「養鶏場での処置は非常に迅速だ」と対応を高く評価する。

 鳥インフルの封じ込めを急ぐのは、鶏などの被害を最小限にするためだけではない。まん延を放置するとウイルスが他の動物や人の体内に入る機会が増え、その結果、人から人に広がりやすいパンデミックウイルスに変化することが懸念されるからだ。

 世界でパンデミック対策が本格化したのは、1997年に香港でH5N1型の鳥インフルエンザウイルスが直接人に感染し、6人が死亡したのがきっかけ。H5N1型による死者はその後も続き、このままパンデミックになれば大変な事態になるとして、各国と並んで日本政府も2005年、最初の対策行動計画を策定。米国の推計モデルに基づき最大で約64万人が死亡するとの被害想定をまとめたほか、発生早期の接種を想定してH5N1型ウイルスからつくったワクチンの備蓄も進めてきた。

▽備蓄に疑問も
 しかし、09年に発生したパンデミックのウイルスは予想外のH1N1型。世界的に流行したが致死率は高くなかった。

 政府はその後もH5N1型のワクチン備蓄を継続。3年の有効期限が切れるたびに補充してきた。

170221honki2.gif
 一方でH5N1型はアジア、中東など発生地域が広がるにつれウイルスの性質が多様化し、同じH5N1型でも、パンデミックを起こすウイルスによってはワクチンの効果があまり期待できない状況になってきた。

 その上、13年に中国で見つかったH7N9型ウイルスでも感染者や死者が増加するなど、人に感染するパンデミック要警戒ウイルスはH5N1型だけではない。抗ウイルス薬の備蓄も進んでいることから、昨年12月に開かれた内閣官房の新型インフル対策有識者会議の席では、科学者の委員から「(現在のワクチン備蓄のやり方を)やめるオプションもあると思う」との意見も出た。

▽複数条件で
 ワクチンに限らず、対策の前提であるパンデミックの被害想定は、10年以上前に作られた古いもの。「国内の医療の状況を反映していない」とも指摘されていた。

 そこで、前回のパンデミックの経験も踏まえ、被害想定見直しのための研究が動きだした。北海道大の西浦博教授(感染症疫学)を中心とする研究班は、さまざまな分野の専門家の予想や分析を基に、複数の条件を置いた被害シナリオを作成する予定で、年内にはこのテーマの議論が本格化しそうだ。

 厚生労働省の新型インフルエンザ対策小委員会の委員長を務める岡部信彦・川崎市健康安全研究所長は「審議会や有識者会議の議論はどちらかと言えば、ワクチンや薬の備蓄の量や方法といった各論に重きが置かれてきたが、情勢の変化を踏まえて、対策の在り方を総合的に再検討する時期が来ていると思う」と話している。
(共同通信 吉本明美)