「湿潤に」がポイント
けがや擦り傷の手当て
 けがや擦り傷は、どうしたら早く治り、傷跡がきれいになるのだろう。 「最近、自然の治癒力を高める“モイスチャー・ヒーリング”(湿潤療法)という考え方がやっと 広まってきた」と塩谷(しおや)信幸・北里大名誉教授(形成外科)は指摘する。今年3月には 「創傷治癒センター」というインターネットのホームページを作り、傷の手当てなどについてアドバイ スしている。
▽頭の切り替えに40年
 これまで100年以上の長い間、傷はガーゼで覆うが、基本的には乾かして、かさぶたの下で治すという考え方だった。
 「これは専門家でも、皮膚は完全に殺菌できないので、上からふさいでしまうと感染を誘発する危険があると考えていたから」と同名誉教授は説明する。
 実はモイスチャー・ヒーリングという考え方は、1962年に打ち出されている。傷から出てきた体液を乾燥させないよう、上から覆って湿潤環境を保った方が早く治る、 という英国の研究者が実施した動物実験に基づいている。
 「ちょうど、やけどの水ほうのようなもの。中の体液にいろいろなサイトカイン(生理活性物質)が 入っていて、破らない方が治りが早いし、跡もきれい」(同名誉教授)
 人では実際に傷をつくって比べる厳密な実験が難しいため、医師の頭の切り替えに実に40年もの時間がかかったというのだ。  
▽まず水道水で
 現在、医療の現場では、傷から滲出してきた体液を吸収して湿潤環境を保つポリウレタンやハイドロ コロイドなど多くの素材が使われるようになっている。
 日常のけがで使われるようになった救急ばんそうこうは、モイスチャー・ヒーリングの第一歩で、 表皮の形成が促進され、傷跡も目立たなくなる作用がある。傷をしっかり覆い、湿潤環境を確保する本 格的なばんそうこうの登場は来年ぐらいになりそうという。
 塩谷名誉教授は、「小さなけがや傷の場合、消毒よりも、まず水道水でごみを洗い流すことが大事」 と話す。その後、清潔なタオルやティッシュペーパーで止血したら、救急ばんそうこうを張る。
 気になる傷跡については、「現在、形成外科の手法で目立たなくすることができるようになった。 治癒のメカニズムが分かってきたので、将来、消すことができるようになるかもしれない」と話し ている。  

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