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人工心肺なしで手術 QOLの向上が可能に |
狭心症や心筋梗塞(こうそく)で亡くなる人は多い。その治療法の1つに冠動脈バイパス手術がある。
心臓の冠動脈に狭さくや閉塞があると、その下流には血液が流れないので、側道を作って血液を流れやすくする。
従来、人工心肺を使って心臓の動きを止めて行う手術が主流だったが、最近、心臓を動かしたままの心拍動下での手術できるように進化してきた。
入院期間を短縮できるなど患者にとって優しい手術として取り組む施設が増えている。
▽最後の切り札 狭心症など虚血性の心疾患が増加した背景の1つに、脂肪分の過剰摂取が挙げられる。その上、喫煙やストレス、 運動不足など現代人の生活習慣が複雑に絡み合う。これらの要因が重なって、冠動脈の硬化が進み、その終末像が狭心症や心筋梗塞なのである。 狭さくした冠動脈の治療には①薬物による治療②血管に細い管(カテーテル)を入れて血管を広げて血流を回復させる③バイパス手術― の3つがある。バイパス手術は、重症なケースが対象になり、いわば最後の切り札だ。 バイパス手術で真っ先に思い浮かぶのは、人工心肺かもしれない。体外循環装置を使って血液を全身に供給する。 これなら、心臓を止めても大丈夫だし、心臓が動かないので手術もやりやすい。 「実は、この方法には、問題があった。脳梗塞(こうそく)などを起こして血管がぼろぼろなっていたりした場合に人工心肺を使うと、 障害が深刻になってしまうことがある。しかも、免疫力が落ちてしまうので、がんがあった場合広がってしまう危険性がある」 2年前から心拍動下での手術を本格的に開始した 小倉記念病院 心臓血管外科の岡林均主任部長 は、新しい手術法を取り入れた理由をこう説明する。 ▽思いもしない効果が 心臓を動かしたままの手術は、バイパスをいかにうまくつなぐかにかかっている。このため、岡林部長らは、スタビライザーという器具を使って、 バイパスを作る部分を吸着して固定、その部分だけを動かないようにして手術する。バイパスには患者本人の胸にある内胸動脈を使うことが多いが、 冠動脈の太さは大体2ミリから1ミリなので、相当な熟練を必要とするのが欠点という。
この手術法は、思いもしないような効果を生み出している。通常のケースでは入院から退院まで10日から2週間足らず。
従来に比べると1週間近く入院期間が短縮できることになった。しかも、バイパス手術が無理だったような80歳以上の高齢者にも
手術が可能になったのだ。「狭さくや閉塞部分が多かったりすると、どうしても人工心肺を使わないけない場合もある。
でも、これまでバイパス手術がやりにくかった重症の糖尿病患者の場合でも、手術できるようになってきた。
心臓を動かしたまま手術できる意味は大きく、回復も早い。QOLの面からも患者に優しい手術」と岡林部長。▽93%が心拍動下で 同病院では、岡林部長を中心としてチームを編成し本格的に開始した2000年にはバイパス手術のうち心拍動下での手術が 93%を占めており、昨年も同じ割合。チームの心臓手術数は、昨年で602例と、日本のトップクラスの症例をこなし、 バイパス手術だけでも年間ざっと300例だ。手術1回当たり、平均3,8カ所の血管の縫い合わせをしており、 血管が完全につながる完全血行再建率が98%に達している。 「本格的に開始して2年目だが、患者の予後は人工心肺を使ったよりも良いようだ。 バイパスに従来の静脈に変えて内胸動脈を使った効果かもしれない」と岡林部長は強調している。 |