心理的支援で糖尿病改善へ
患者の3割にうつ症状
ノボ社の調査で判明
 糖尿病患者の10人に約3人が、合併症に対する不安などから、うつ症状などの 精神的問題を抱えている実態が、糖尿病治療薬大手のノボ・ノルディスク・ファーマ 社(本社デンマーク)の調査で分かってきた。
 調査に当たった医師らは、糖尿病治療で最も重要な患者自身による血糖値コント ロールを妨げる一因になっていると分析しており、「精神科医も加わるなどサポー ト体制を充実させれば糖尿病症状を改善できる可能性がある」と指摘している。

▽難しい自己管理
 糖尿病は膵臓(すいぞう)がつくるインスリンの分泌量が減ったり、効きが悪く なったりして、エネルギーの源であるブドウ糖をうまく利用できなくなり、血糖値 が高くなる病気だ。
 治療は薬や食事療法などによって自分で血糖値をコントロールし、合併症の発症 を防ぐことが最大の目標となる。だが、多くの患者はこの自己管理ができていないの が実態で、治療成績を向上させるための大きな課題となっている。  
▽心の問題
 昨年、ノボ社が世界13カ国で患者約5500人を対象に実施した実態調査でも 「自己管理できている」と答えたのはわずか3分の1にとどまった。
 なぜ自己管理がうまくいかないのか。調査をとりまとめたオーレ・ベック同社マ ーケティング担当副社長は「病気に対する不安や、周囲の無理解から来る心の問題が 一因となっていることが、今回の調査で判明した」と説明する。
 調査では、「抑うつに近い状態」と判定された患者が33%を占めたほか、「低 血糖が起きるかもしれないということがとても心配だ」と44%が答え、「糖尿病を とてもストレスに感じている」は34%に上った。
 また、日本の医療従事者の50%以上がケアの必要性に気付きながらも、診療時 間が短いなどの理由で問題を放置してきたことも明らかになったという。
 「よい自己管理を実現するためには心の状態が健全であることが第一の条件。こ れではできないのも当然だ」と同副社長。
▽脅しは逆効果
天理よろづ相談所病院 (奈良県)の石井均内分泌内科・栄養部部長によると、糖 尿病治療は食事や運動療法のほか、血糖値のチェックやインスリンの自己注射など、 患者に求められる治療項目が多く、「やりこなすのは至難の業」という。
 だが、医師や家族は、自己管理がうまくいかない責任を患者の性格のせいにして 「このままでは合併症が起きる」などと脅してでも徹底させる傾向が強い。  調査結果について、石井部長は「従来のやり方は、患者の精神的負担につながっ ており、かえって逆効果であることが示された」と分析。
 「糖尿病は一生続く病気であり、精神的負担はすごく重い。患者を批判するので はなく、医師や家族、社会全体で支援をすることがよい治療につながる」と話してい る。
 石井部長は秋ごろから精神的なサポートでどのぐらいの治療効果が上がるか臨床 研究を始める方針だ。

ヘッドラインへ戻る

記事、写真、グラフィックスの無断転載を禁じます。
2002 Kyodo News (c) Established 1945 All Rights Reserved