手術せずに子宮筋腫を治療
動脈ふさぎ兵糧攻め
切開5ミリ、90%が満足
 成人女性の4人に1人が持っているという子宮筋腫を手術せずに治療する「動脈塞栓(そくせん)術」が、 徐々に広まりつつある。腫瘍(しゅよう)に栄養を送る動脈をふさぎ、兵糧攻めにする手法で、子宮の機能は温存され、 皮膚の切開も長さわずか5ミリ。治療を受けた90%以上の患者が「とても満足」と回答しているという。

▽4カ月で半分に
 子宮筋腫の多くは治療の必要がない。だが、10―20%の人は過多月経や腹痛に悩まされ、鎮痛剤、止血剤の服用などのほか、 子宮摘出手術やホルモン療法が行われてきた。
 動脈塞栓術は1990年ごろからフランスで始まり、国内では97年ごろから計約1000件が実施されている。右股(こ)関節の近くに局所麻酔をして5ミリ程度切開し、直径約2ミリ、スパゲティのめんほどの太さのカテーテル(管)を動脈に挿入。 筋腫のすぐ近くの子宮動脈まで入れ、0・5ー1ミリ角のゼラチンスポンジを送り込んで、動脈をふさぐ。治療は約1時間で終わるが、 その後の痛みに対処するため、2泊3日から3泊4日で入院する。
 130例以上を手掛けた済生会滋賀県病院放射線科の勝盛哲也医師によると、筋腫は徐々に小さくなり、体積は4カ月後には平均で約50%、1年後には30%になる。  
▽体と共存
 子宮摘出と比べ①全身麻酔が必要ない②切開のあとがごく小さい③入院期間が短い―などの長所がある半面、症状が全くなくなるわけではなく、 子宮摘出に至る場合もある。
 今年4月現在、同病院で治療を受けた128人のうち、3人は症状の再発や合併症などで子宮を摘出、 2人は脱落しかけた筋腫を膣(ちつ)から取り出すなどした。しかし、その他は特別な措置は必要なく、出血などの症状も改善、 90%以上の人が「とても満足している」と答えた。
 勝盛医師は「体と共存できるおとなしい筋腫にする治療」と説明する。治療後に妊娠した例も世界で100例以上あるが、国内では「治療後の妊娠・出産の安全性についてデータが十分でないため、 出産を望む人には実施していない」(勝盛医師)医療機関が多いのが現状だ。健康保険が適用されないため、40万ー60万円の医療費が自己負担という課題も残っている。  
▽婦人科と連携重要
 患者にエックス線を照射し腫瘍やカテーテルの位置を確認しながらの治療となるため、ほとんどは放射線科の医師が担当している。 一方で、動脈塞栓術を知らない産婦人科医もおり、患者の選択肢が狭まっていることも否定できない。
 このため、杏林大医学部の中村幸雄教授(産婦人科)らが代表世話人となり昨年9月、普及を目指した研究会が発足した。中村教授は「画期的な治療法で、今後、広まるだろう」と塞栓術を高く評価した上で「適応かどうかの判断や、 痛みや感染症など術後の患者管理で、産婦人科と放射線科の連携が重要だ」と強調している。

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