食中毒予防の可能性
乳酸菌の研究広がる
 非営利の学術組織「乳酸菌応用研究会」が昨年暮れ設立され、乳酸菌を利用した健 康維持・増進に向けた研究活動が熱心に進められている。このほど開かれた発表会で は、病原性大腸菌0157などによる食中毒の予防に役立ちそうなデータが報告され た。
▽病原菌が付くのを排除
 病原菌排除の具体的なデータとして、ネスレ中央研究所のエドアルド・シフリン食 品免疫研究室長は、乳酸菌「LC1」の3つの働きを報告した。  いずれも試験管内の実験結果だが、まず乳酸菌が腸の上皮細胞に対し、非常に強い 吸着性を持つこと。この力によって、病原菌が腸の表面に付くのを物理的に排除して しまうらしい。
 腸の表面の上皮細胞を培養したところに、大腸菌やサルモネラなどの病原菌を入れ るとほぼ100%上皮細胞にくっつくが、先にLC1を入れておくと、吸着したLC 1が病原菌の邪魔をして、10―20%しかくっつくことができなかった。逆に、先 に病原菌がくっついていたところにLC1を入れると、病原菌の吸着は70%まで減 少した。
 2番目は、病原菌に対する抗菌作用だ。培養した病原菌のところにLC1を入れる と、連鎖球菌では変化はなかったが、LC1が増殖するにつれて黄色ブドウ球菌やリ ステリア菌、赤痢菌、サルモネラなどの病原菌の生存率が下がり、菌が減少した。乳 酸菌LC1が酸だけでなく、抗菌物質を出しているという。
▽免疫力をアップ
 3番目は、人の腸そのものに働き掛ける作用で、LC1が腸の上皮細胞にくっつく と、細胞に働き掛けて、免疫力をアップさせる生理活性物質であるサイトカインを出 させる。すると、白血球の1つである、腸内のマクロファージが活性化し、病原菌の大腸菌 などをよく食べるようになった。
 また、無菌マウスにサルモネラを与える実験では、通常、10日で死亡するのに対 し、LC1を与えていた群では20日以上生きたという。
 今日、ヨーグルトは腸を守るという点で大きな期待を集めているが、同会の理事 で、光岡知足東大名誉教授(腸内細菌学)は、「各メーカーが利用している乳酸菌は 比較は難しいが、共通した作用はある。食中毒に対する効果の証明はこれからだが、 菌が生きたまま腸に届かなくても、免疫機構を刺激することは分かっている」と話し ている。

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