乳児の不整脈根治に道
カテーテルで治療
日赤和歌山が挑戦
  小さな子供にも不整脈があるらしい。厄介なのは乳児は自分で症状を訴えることが できない場合が多く、突然死につながりかねない危険性をはらんでいる点だ。こうし た乳幼児の心臓に細い管(カテーテル)を挿入して、不整脈を根治する高周波カテー テルアブレーション=心筋焼灼(しゃく)術=が、威力を発揮している。

▽生後122日目に
  山口大病院に入院した男児のケースでは、出生直後から脈拍が異常に多い頻拍を起 こしていた。
  薬剤の投与で頻拍は一時的に改善したが、そのままでは治癒の見込みがなく、ヘリ コプターで日赤和歌山医療センターへ搬送した。
  「左側の心房と心室の間の異常信号伝達で毎分260回の頻拍だった。薬剤を投与しても頻拍は再発を繰り返し、とても危険な状態だった。最後の切り札として高周 波カテーテルアブレーションを実施した。男児は生後122日目で、こんな乳児も治療が可能になった」と同センター第二小児科の中村好秀部長は振り返る。
  治療をしたのは、今年4月初め。太ももの静脈から挿入した直径1・5ミリほどの カテーテルを心臓に入れて調べた結果、左心室と左心房の間の最も左側の部分に心拍 信号が異常に伝わる部分があることが判明。
  カテーテルの先端から高周波を出し、その熱で左心房の一部を焼いて伝達異常を止 めた。エックス線で透視しながらの慎重なチーム治療は3時間で終了。乳児の不整脈 は、消失した。
▽不整脈が出やすい乳児
  心臓は、規則正しく収縮を繰り返し、肺や全身に血液を送り出すポンプの役割を果 たしているが、この拍動のリズムは、心臓で発生した電気刺激によって生み出され る。
  電気刺激は、心臓の右心房にある洞結節という部分で発生、心房や心室に伝えられ て拍動する仕組みだ。刺激が正しく伝わればよいが、うまく伝わらなかったり、洞結 節以外で異常な電気刺激が発生すると、拍動のリズムが乱れたり、速くなったり、遅 くなったりする。これが不整脈だ。
  乳児の場合は、心臓の発達が未熟なケースが多く、不整脈が出やすいとされてい る。米国のデータでは、新生児と幼児計134人に対して、24時間心電図を測定したところ、72%とかなりの高率で不整脈が発生していることが確認されてい る。
▽突然死にも関連
  特に新生児期、乳児期の不整脈は、定期健診で発見する以外、親には分からない ケースも多く、発見が遅れて重症になりやすい。しかも、いったん治ったように見え ても、小学生のころに再発する例もある。重症化するのはごく一部とみられるが、中 村部長は、今問題になっている乳児の突然死の中に重症の不整脈が含まれているので はないか、と推測している。
  中村部長のグループは、近畿大医学部講師時代を含めて、これまでにカテーテルア ブレーションを580例実施しており、日大医学部板橋病院、福岡市立こども病院 など小児のカテーテルアブレーションを手掛ける施設が次第に増えている。
  「乳児が不整脈を起こした場合は、長期間経過を観察する必要がある。治療は薬物 もあるが、なかなか治しにくい。アブレーションを実施すれば、ほぼ100%根治が期待できるタイプの不整脈が多い。治療の選択肢が増えた。家族と相談しながら患者にあったオーダーメー ドの治療ができるようになってきた」と中村部長は話している。

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