がんを凍結し破壊 超低音で痛みなく 
臨床試験終わり申請へ
 がんや子宮筋腫をマイナス185度の超低温で凍結し破壊する「凍結手術」が、アルゴンガスを使った冷凍治療器とオープン型MRI (磁気共鳴診断装置)の先端技術の組み合わせで可能になった。手術は局所麻酔で、少し太い針のような冷凍治療器のプローブをがん組織内部に挿入し、 凍結させる。凍結の麻酔効果により治療中の痛みもなく、体の負担も少ない。臨床試験も終わり、秋には認可申請の予定だ。

▽急速凍結が可能
  冷凍治療器のプローブ(直径約3mm)が急速に冷えるのは、物理学の「ジュール・トムソン効果」による。 これは圧縮された気体が一気に膨張すると温度が下がる現象で、工業的には気体を液化するときに使われる。 がん組織に挿入されたプローブには、ボンベから高圧のアルゴンガスが先端まで導かれ、内部で小さな穴から噴き出す。
 その結果、わずか10秒で先端部の2cmがマイナス185度まで下がる仕組みになっている。 一方、がん組織がどの範囲まで凍結したかを正確に見られるのがMRIだ。通常のMRIは筒型で体の周囲ををすっぽり覆ってしまうが、オープン型はタイプによって、 上下や左右に空間的な余裕ができ、凍結手術を行いながら、MRIの画像を見ることが可能になった。
▽黒く映る凍結部
 凍結手術の臨床試験を実施した 慈恵医大柏病院(千葉県柏市)放射線科の原田潤太・助教授は「MRIでは凍結した部分が黒く映り、範囲が正確に把握できる。この点が一番大事」と指摘する。 手術では、プローブをがんや子宮筋腫の組織に挿入し急速凍結。「約10分でプローブを中心に直径約4cm、長径5・5cmの“アイスボール”(凍結部分)ができる。
 凍結範囲はがん組織の縁から5mmを超えるように大きめにとる」(同助教授)。 装置は5本のプローブが同時に使えるので、大きさに合わせて複数のプローブを使う。 1回の手術時間(入室から退室まで)は約2時間。凍結により、細胞が破壊されると同時に凍結部位の細い血管に血栓が生じて、血液が全く通わなくなり、細胞が壊死(えし)することが確認されている。
▽26例に実施
 同病院では昨年3月から今年5月までに腎がん12例、肝がん4例、子宮筋腫10例の計26例に対し、凍結手術を実施。 術後の経過観察を2-3週間後と6-8週間後にエックス線CTかMRIで行った。その結果、腎がんでは全例で壊死して次第に縮小、2例で消失した。 肝がんでは4例中3例が壊死したが、1例で周囲にがん組織の残存が見られた。 子宮筋腫では2週間後で平均16・2%、六週後で同34・8%縮小。10例すべてで、月経困難症や貧血などの症状軽減が得られた。
 しかし、1例で7カ月後に筋腫の増大と症状悪化が見られたという。原田助教授は「凍結手術は痛みもなく、体への負担も少ない優れた手術法になると思う。 26例中23例は翌日退院できた。将来は合併症がなければ日帰り手術も可能になるだろう」と話している。 北海道大病院放射線科も6月末に同じ凍結手術の治験を終了。経過観察の後、秋には双方のデータをそろえて認可の申請が行われる予定。

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