|
精神分裂病の名称変更 新世代の治療薬が有効 |
|
「精神分裂病」が、この夏「統合失調症」に正式に名前を変え、イメージ一新を図る。その病名から、「精神」そのものが分裂してしまうというイメージが長い間続き、患者の人格の否定や誤解・差別を生み出してきた経緯があり、一方、精神医学と治療薬の発達により、この病気の過半数が治ることが分かってきたからだ。最近は副作用の少ない新世代の抗精神病薬が開発され、より有効な治療が可能になってきた。 ▽誤解が広まる
名称変更を検討してきた日本精神神経学会の理事長で東北福祉大大学院の佐藤光源教授(東北大名誉教授)は「治る人は多い。ただ再発しやすい病気であり、家族や周囲の理解、地域の生活支援システムが大切」と指摘する。一生の間には、約100人に1人はこういった状態になることがあるという。
しかし、スキゾフレニアが「精神分裂病」と翻訳された1935年ごろ、「この病気が、最後には人格崩壊まで進む予後不良の病気と紹介されてしまった。医学の教科書にも70年ごろまで載せられていた」と佐藤教授。当時は有効な治療法が少なかったこともあって、誤解から不幸なイメージが広まってしまったようだ。 ▽抗精神病薬が登場 「医師は、患者の社会参加を目指して治療しているのに、病名を告げることで、逆に社会参加を阻まれることが少なくない。患者に病名を言えず、診断書も書きにくい。これでは正しい治療ができない」(同教授)。 病名変更委員会の1人、国立精神・神経センター精神保健研究所成人精神保健部の金吉晴部長が、97年、5つの国立療養所精神科外来を調べたところ、精神分裂病の患者で自分の病名を知っている人は20%に満たなかった。「同じ精神の病気でも、うつ病や神経症の患者とは大きな差がある。自分で分からないまま、うつ病など誤った病気の本を読んだりする患者もいる」と金部長。 治療が進み始めたのは、クロルプロマジンなどの抗精神病薬が登場した1960年代。急性期の幻覚や妄想、興奮などの「陽性症状」に非常に効果があることが判明。薬の作用が脳内伝達物質のドーパミンの受容体を阻害することから、逆にこの病気がドーパミン神経系の過敏反応性に関係していることが分かってきた。 ▽社会復帰が容易に
「ただ従来の薬は、無関心や意欲・集中力の低下などの“陰性症状”を持つ患者には効かなかった。また副作用が強く、眠気やだるさ、パーキンソン病のような症状が出るなどの短所があった」(佐藤教授)。
これに対し、最近開発され、日本でも使われるようになったのがクエチアピン、オランザピンなどの新世代の抗精神病薬(非定型抗精神病薬)。ドーパミンだけでなく、セロトニン神経系の受容体の働きも阻害するので、陽性と陰性の両症状に効く。 佐藤教授は「体重が増えやすいという別の副作用があり、注意が必要だが、何よりも従来の薬のような副作用がないため、患者の社会復帰が容易になってきた」という。 金部長も「今、発症する人はかなり治っている。重症化する人もいるが、それは他の病気でも同じ。単に神経の病気ということで普通の病気であることを知ってほしい」と話している。 |