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世界中の研究者が必死に探していたホルモンを、国立循環器病センター研究所生化学部の寒川賢治部長らが発見した。それから2年。この物質は成長ホルモンの分泌促進のほか、食欲増進や心機能改善など、さまざまな機能を持つことが分かり、熱い視線を集めている。 ▽胃で生産、脳下垂体で作用
このホルモンはアミノ酸28個からなり、
「グレリン」
と名付けられた。1996年、成長ホルモンの分泌を調節する新たな受容体が見つかり、各国でこれに結合する物質の探索が始まった。その中で、寒川部長らが突き止めたのがグレリンだった。
「脳にある」との予想を覆し、発見場所はラットの胃。次いでヒトの胃でも産生細胞が見つかった。
「特定の場所に特定の脂肪酸が結合して初めて機能する珍しい構造をしている上、非常に壊れやすいため、探索の目を逃れていたらしい」と寒川部長。
胃でつくられた後、血流に乗り脳下垂体に作用、成長ホルモン分泌を促す。
▽食欲増進やエネルギー代謝に関与 グレリンにはさらに、心機能改善や食欲増進、脂肪を蓄えるエネルギー代謝の調節など新たな生理作用が次々と見つかった。 食事時になるとグレリンの血中濃度は上がり、食べると下がる。グレリンを投与された人の食事量は30%も増えたとの研究結果も海外から報告されている。
同センターはまず、重い心不全による栄養状態悪化で、悪液質と呼ばれる衰弱状態になった患者を対象に臨床試験を計画した。
健常者への投与で安全性を確認。次いで患者に1回だけ投与した結果、投与しない患者に比べ、平均動脈圧が約10%低下し、1回の心拍で送り出される血液量も増えるなど、一時的ながら心機能が約25%改善されることを確認した。
次いで患者数を増やし、最大で3週間程度グレリンを継続投与し、心機能と栄養状態の改善を確かめる。
心臓血管内科の永谷憲歳医師は「食欲が増進して栄養状態が改善。成長ホルモンの増加で心筋が回復し心臓の収縮が良くなると期待している。患者の生活の質も向上するし、治療の選択肢も広がる」と語る。
▽4月以降に臨床試験の申請
グレリンは昨年、京都大病院に誕生した探索医療センターの最初のプロジェクトにも選ばれた。
期間は5年間で、計画はまだ策定中だが、最も注目されるのが神経性食欲不振症(拒食症)治療への応用だ。
グレリン創薬プロジェクトの赤水尚史助教授は「拒食症は治療薬がないだけに、効果があれば朗報。可能なら(臨床試験に)トライしたい」と語る。
さらに、がんや肝硬変、敗血症などさまざまな疾患による悪液質の治療や骨粗鬆症など骨の代謝改善も有力な候補だという。
臨床試験実施の倫理委員会への申請は4月以降になるが、赤水助教授は「もともと体内にある物質だけに薬として臨床応用しやすいし、適応症も多そう。日本で見つかった新規物質をきちんと評価、開発して花を咲かせたい」としている。
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