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最近、何か歯ごたえのあるもを食べているだろうか。日本の食生活は豊かになったが、考えてみると、ほとんどかむ必要がない“軟食”だけを食べているのかもしれない。日本咀嚼(そしゃく)学会理事長の斎藤滋さんは「かまないことが、健康を維持する多数の生理メカニズムを働かなくさせている。肥満や生活習慣病の増大はかまないことが一因」と“グルメ軟食時代”に警告を発している。 斎藤さんらの調査によると、現代人のそしゃく回数は1食当たり約620回。一方、弥生時代の再現食では同約3990回で、現代人は古代人の6分の1しか口を動かしていない。また戦前の普通の和食では同約1420回。半世紀で、半分以下になった計算になるという。 食物をかむと、歯根膜などから脳に感覚が伝わり、視床下部の神経細胞でヒスタミン代謝回転が高進、満腹中枢が刺激されて摂食量の抑制が働く。同時に、よくかむと数分で肝臓に蓄えられているグリコーゲンが血中にブドウ糖として放出され、食物が消化・吸収される前に脳内ブドウ糖の上昇で満腹中枢を作動させるという。一方、液体食をチューブで直接胃に注入すると、満腹中枢が活性化しないことが実験で分かっている。「かむことが肥満防止の多元的なスイッチになっている」(斎藤さん) 大分医科大第一内科では、糖尿病入院患者・重度肥満症の治療の一環として、摂食時に1口20-30回、しっかりかむ習慣を学習させたり、食前にガム1枚を10分間かませる指導を実施。ガム療法では食物摂取量が3割程度減少することを確かめている。また、高齢者の歯科治療が知能障害の改善に役立つことなどもそしゃくと脳機能の密接な関係を示している。 斎藤さんは、生活習慣病や痴ほうの防止にそしゃくの重要性を強調、「そしゃくを意識した毎日の生活が大事。またガムは、そしゃくを効率的に強化するための“健康グッズ”だ」と指摘している。 |