驚くほど伸びる骨 イリザロフ法が威力
  
 驚くことに、骨というのは無限に伸びるらしい。整形外科の領域でこの15年ほどの間に実施されるようになった イリザロフ法 という骨延長術は、 まさに骨を伸ばす「再生医療」だ。ただし、骨を切る手術から始まるだけに、簡単に受けられる手軽な治療法ではない。しかし、低身長の治療や 骨の変形矯正、事故などで失われた部分の骨の再生などになくてはならない治療法になっている。
▽水あめ伸ばすように
 イリザロフ法は、分かりやすく言うと、骨折が治るときの体のメカニズムを利用したものだ。 帝京大医学部整形外科の松下隆教授によると、骨折が治るときは、くっつけた骨の間に「仮骨」と呼ばれる“水あめ”のような柔らかい骨が作られる。 そのまま、強くくっつけていれば、仮骨が橋渡し役として骨になり、骨折が治る。 骨を伸ばすには、このとき逆にくっつけた部分を少しずつ引き離す。 水あめのような仮骨がどんどん作られるので、それを伸ばしていって最適の長さで固定しておけば、その部分が骨になり、結果的に骨が伸びる仕組みだ。 このとき、曲げるように伸ばすこともできるし、ねじるようにすることもできる。つまり、事故や奇形などで変形した骨をまっすぐに治すこともできることになる。問題は治療を始めるには、最初に「人工的な骨折」を起こさなくてはならないことだ。実際にはノミなどで切断する。やはり、簡単な手術ではない。 現在は、仮骨が引っ張られる力学的な刺激に反応して骨を作っていくと考えられている。 同教授は「筋肉部分の伸びには限度があるが、骨は無限に伸びるのではないか」と話す。
▽伸びは1日1ミリ
 治療の対象となるのは主に脚や腕で、先天性小人症(四肢短縮型)や外傷による骨の欠損、悪性腫瘍(しゅよう)や骨髄炎などで骨を切除したケース。 奇形や事故などによる骨の変形では矯正に利用される。 実際の治療 では、若い人で1日1mm伸ばせるという。通常、切断部を1週間くっつけておくが、 その後、固定器を調節して「1日0・5mmを2回、または0・25mmを4回伸ばす。5cm伸ばすのはやさしい。 最長で33cm伸ばしたことがある」(同教授)。治療期間中は寝ているのではなく、歩いて運動するというからすごい。 「この方法でできた骨は全く正常で、2-3年たつとその部分分からなくなることもある。骨の伸びに伴い筋肉や血管なども伸びる」と松下教授。 「ただ、治療に長い時間がかかることと、感染予防のために、常に骨を固定するピンの消毒をしなくてはならないことが短所」と話している。

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