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がんの放射線治療 後手に回るケース今も |
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「早期がんを切らずに根治させるのが得意」というのが放射線治療だ。特に口腔(こうくう)や耳鼻咽喉(いんこう)科領域の頭頚部(けいぶ)がんや子宮頚がんでは有効性が高い。高齢社会の到来という点でも、手術や強い抗がん剤が使えない患者が増え、放射線治療が不可欠になってくる。がんの治療で今後、ますますます頼りにされ、出番が多くなるのは間違いない。 ▽少ない副作用 ![]() ところが現状は、医師をはじめとする理解不足により、適切なタイミングで放射線治療を受けられず、手の施しようがなくなってから、放射線科に回ってくるケースがいまだに続いている。 「手術や抗がん剤に比べ、副作用が少なく安全で、機能や形態も温存できるのが放射線。しかも安価」と指摘するのは国立病院機構、北海道がんセンター放射線診療部の西尾正道(にしお・まさみち)部長。 「医師が、がん治療の選択肢をきちんと示せずに手遅れになった場合、欧米などでは訴えられてもおかしくない」 頭頚部がんのほか、前立腺がんや乳がん、食道がんなども、上手に放射線を使うことで大きな手術と同等の有効性を持つことが認められている。 「1期の喉頭(こうとう)がんでは、外からの照射だけで90%以上で治癒するし、1-2期の舌がんでは、放射線を出すセシウムのような針状の小線源を患部に挿入し、切らずに90%以上の治癒が得られる」(同部長) ▽生かせぬデータ 日本では手術が圧倒的に多い子宮頚がんでは、欧米では1930年代から手術と放射線の成績は同等と認められている。 「早期の子宮頚がんでは、欧米では放射線が第一選択。実際に8-9割が放射線治療を受けている。日本は逆で8-9割が手術療法」と同部長。 前立腺がんも1期、2期は全摘手術と同等の効果がある。生活の質を高く保てる、小線源を永久に埋め込む方法も徐々に普及し始めた。前立腺がんでは、手術の出番が次第になくなりつつある。 さらに「乳がんは欧米で1970年代初めから、乳房切断手術と乳房温存療法(温存手術プラス残存乳房への放射線照射)が同等とのデータが無作為比較試験の結果で出ている。日本は20年遅れていた」と西尾部長。 食道がんは難しいがんだが、放射線プラス化学療法で、早期のものでは手術と同等な成績だ。 悪性リンパ腫も放射線がよく効き、化学療法後に照射することにより根治治療ができる。 ▽専門医も不足 ![]() 放射線治療への理解不足とともに、専門医の不足も大きな問題だ。 放射線の専門医は約4500人いるが、9割は診断学が専門で、治療の専門医は1割の約450人にすぎない。米国の10分の1以下だ。 放射線治療医の認定は日本放射線腫瘍(しゅよう)学会が実施しているが、認定医が少ないだけでなく、地域格差もかなり大きい。 「今年10月現在で福島県はゼロ。1人の県が5県、2人が6県、3人が6県あり、5人以下が27県という状況では危機的。これでは放射線治療への期待にこたえられない」(同部長) 放射線治療装置3台を持つ同センターの治療現場では連日フル回転。午後5時過ぎでも次々と患者が治療を受けていた。 西尾部長は「昨日も1日1台で50人を照射。1人15分として1時間で4人。8時間やっても32人だが、やるしかない。がん治療は専門医の育成など解決しなければならない問題が山積している」と話している。 同部長らは放射線治療の情報を伝えるため、今年初め「市民のためのがん治療の会」(連絡先はファクス042-572-2564)を設立、講演会開催やセカンドオピニオンのあっせんなどの活動を続けている。 |