痔を切らずに治せます
注射薬のジオンが効果
痛み軽減、入院短縮


 軽い人も含めると、日本人の3人に1人が持つとされる「痔(じ)」。命にはかかわらず、恥ずかしさのため放置されがちだが、生活の質を大きく落とす。だが最近は、手術が必要なほどの重症例の多くも、注射で手軽に治るようになってきた。

 中国生まれ

 痔には、俗に言う「いぼ痔」の痔核と「切れ痔」の裂肛(こう)、そして肛門(こうもん)の周囲にうみがたまってできる痔瘻(じろう)がある。
 中でも痔核が最も多く、受診者の60%に上るという。血流の悪化で肛門を締めるクッション組織が飛び出すもので、内部の直腸部分にできる内痔核と外側の皮膚にできる外痔核に大別できる。
 この内痔核の治療用に今年3月、三菱ウェルファーマの注射薬「ジオン注」が承認された。
 中国で1970年代から使われていた注射薬「消痔霊」の添加物を一部変更した薬で、主成分は硫酸アルミニウムカリウムとタンニン酸。
 患部への血液流入を抑え、痔を硬く、小さくする。腫れが肛門から飛び出す脱肛を伴う症例が対象だが、患部を切り取る手術に比べ出血もなく、痛みも軽減。入院日数の短縮が図れる。
 
経験重ね成績向上

 北海道旭川市のくにもと病院(国本正雄(くにもと・まさお)院長)では今年4月から11月22日までに200例を実施した。内訳は手術との併用36例、ジオン単独治療164例。
 このうち、脱肛が戻らなくなり、内部の血が固まる「かんとん痔核」を起こした合併症例が1例あり、翌日手術で除去したほか、脈拍や血圧が低下する副作用が13例、再発が7例あった。
 しかしいずれも治療開始直後のケース。経験を重ね、さまざまな治療法の改良を施した9月以降は起きていない。治療に当たる鉢呂芳一(はちろ・よしかず)医師は「今では『治る』と自信を持って言い切れるようになった」と語る。
 合併症は薬剤が括約筋のそばに入ったためとみられ、治療時の患者の体位を変えた後は起きていない。薬剤の注入速度を遅くしたり、途中で休憩することで、血圧低下などの副作用も出なくなった。局所麻酔薬を含んだジオンを使うと副作用が抑えられることも最近分かったという。
 鉢呂医師は「長期成績はまだ不明だが、中国での消痔霊の長期成績は良好のようなので、今後についても期待している」と話している。

難しい用量決定

 内痔核のうち、ジオン治療が無理なのは、脱肛を繰り返して硬くなったものなどごく一部。一方で少ないながら、外痔核や直腸脱などでも好結果を得ているという。
 治療後は鎮痛剤も不要で、現在は安全のため4泊5日の治療が原則だが、「将来は日帰り治療も可能では」と鉢呂医師。
 治療はまず、痔核の上部の境目に注射して血液の流入を遮り、次に痔核本体に注射。最後に下部に注射して血液の流出にふたをする。
 一つの痔核に合計9㍉㍑程度打つが、用量は個人差があり、その決定は難しい。鉢呂医師は「注射で患部が変色し、赤みが薄れたら適量。微妙なさじ加減が求められ、経験が必要になる」。
 消痔霊治療では、量が多すぎたことによる直腸のかいようや壊死(えし)も報告されているが、十分な量を注射しないと今度は再発する。ジオンの治験では1年間で16%の再発を記録したが「一施設当たりの症例が少ないことが原因と思われ、経験を重ねることで改善できると思う」と鉢呂医師。
 承認でも技術のある医師が使うことが条件となり、三菱ウェルファーマも講習会を開催。9月末までに既に約350人の医師が受講した。


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