がんを攻撃する体内の免疫細胞の働きを強化するWT1ワクチンの臨床試験に、大阪大や東京医科歯科大、高知大、九州大など約20の医療機関が共同で取り組んでいる。ほかに治療法がない末期患者らに投与、がんの縮小や延命の効果が出ているという。
がん細胞にはWT1というタンパク質が多く、一部は断片のペプチドという形で細胞表面に出ているため、がんの目印になる。
WT1ワクチンは、大阪大の杉山治夫(すぎやま・はるお)教授(免疫学)が開発。人工的に合成したペプチドを注射して免疫系を刺激、免疫を担うキラーT細胞を増やして働きを強め、がん細胞表面のペプチドを手掛かりに攻撃させる仕組みだ。
▽投与後にがんの縮小も
2001年12月から大阪大で臨床試験が始まり、徐々に参加施設が増加。施設によって対象とするがんの種類は違うが、06年に大幅に増え約20施設になった。
これまでに肺や胃、乳房、脳などのがんや、白血病、小児がんで180人以上がワクチン投与を受けた。うち八割の患者に実施した大阪大病院では、がんの増殖抑制や縮小だけでなく、乳がんや白血病、脳腫瘍(しゅよう)では延命効果が見られたという。
末期乳がんの40代女性は抗がん剤が効かず、余命1、2カ月と診断されていたが、大腸に転移したがんが投与後には縮小するなどして約3年1カ月存命した。
多発性骨髄腫の50代女性は、骨髄細胞に含まれるがん細胞の割合が85%から26%に減った。

▽安全性を臨床試験で
「末期患者が多いので、効かなかったり最終的に亡くなったりした人もいるが、ほとんどの種類のがんで効果が期待できる。重い副作用は見られていません」と同教授。
現在、主に行っているのはワクチンの安全性と有効性を確かめる臨床試験で、3ミリグラムのペプチドを週1回、合計12回注射する。対象は ①16歳以上80歳未満 ②効果が望める特定の白血球の型(HLA)を持っている ③ほかに重い病気がなく全身状態が安定している ④手術や抗がん剤、放射線などの治療で十分な効果が得られないかWT1による治療を希望している―など。
杉山教授は「参加施設は、ある程度大きな規模で、投与の妥当性などを検討する倫理委員会があるところ。参加はさらに増える見込みだが、慎重に進めたい」と話している。問い合わせなどは臨床試験事務局で電子メールでのみ受け付ける。
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