変わる肥満治療
目標は体重の5~10%減
運動の継続が鍵


 肥満(症)の治療が変わりつつある。従来は標準体重まで減らすことが治療目標 だったが、現在は体重の5~10%減が目標になった。このような軽い減量でも糖尿 病や高脂血症などの発病が抑えられ、心筋梗塞(こうそく)などの虚血性心疾患のリ スクを減らせることが多くの研究で分かってきたからだ。 
▽運動不足の日本人
 現在、体のやせ・太り具合を表すには、体重(キロ)を身長(メートル)の2乗で 割った「体格指数」(BMI)が主に使われており、通常、BMIが21~23が望 ましいとされている。
 日本肥満学会は、25以上を「肥満」として生活習慣病予防の対象とし、医療の対 象とする「肥満症」は、①BMIが25以上で高血圧や高脂血症、糖尿病などの生活 習慣病を合併している場合、または②合併症がなくても腹部エックス線CT検査で内臓 脂肪型肥満が確認された場合―と定義している(内臓脂肪は生活習慣病と密接な関係 があることが分かっている)。
 共立女子大の井上修二教授(栄養生理学、医学博士)は「日本人で問題なのは、男 性では30%近くが肥満の30~60代。女性では同様に30%が肥満の59~60 代。それとは逆に20代女性では20%もいる“やせ”」と指摘する。  井上教授によると、この40年間、成人の平均摂取エネルギーは1日約2000k calで横ばいか、むしろ減少気味。一方、肥満はこの間に男性で約4倍、女性で約 3倍に増えていると推定され、「日本の肥満の主因は運動不足を含めた身体活動不 足」(同教授)という。
  
▽発症リスクを抑制
 従来、肥満(症)の治療は、大変な努力をして標準体重まで減らすという考え方 だった。
 「最近は肥満に伴う病態改善を目指す考え方に変わり、5~10%の減量で高血圧 や糖尿病、高脂血症などの発症を減らすことができることが欧米を中心とした多くの 臨床研究で分かってきた」と井上教授。
 少しの努力で肥満に伴う合併症の病態が改善され、患者のQOL(生活の質)がよ くなるなら、それを目指そうということらしい。
 薬を使って糖尿病などを一つ一つ治すよりも、その“上流”にある肥満を治すこと で、脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞、糖尿病の腎不全による透析などに至るリスクを 減らせるという考え方だ。
 例えば、米国で体重100キロの肥満の人たちを2群に分け、片方を4年間で4kgの減量をさせて比べた結果、非減量群は35%が糖尿病を発症したのに対し、減量群は 15%弱の発症で済んだ。
▽基礎代謝を上げる
 「同じ減量でも一番いいのは薬を使わずにライフスタイル変更による減量」(同教 授)だ。大事なことは運動をし続けた人が体重減を維持できるという点だ。
 運動で消費する「活動代謝エネルギー」はそれほど多くないが、運動は体の消費エ ネルギーの60%を占める基礎代謝を上げる効果がある。
 減量は食事療法と運動療法を同時に行うことが基本。食事療法だけでは、必ず1~ 2カ月後に体重減が止まる。体が防衛のために基礎代謝を減らし、“適応”してしま うからだ。
 食事療法の効果を保証し、継続的な減量を得るには活動代謝とともに基礎代謝を上 げるための運動が不可欠だ。
 井上教授は「これまでは体の脂肪を燃やすために一時間も継続する運動が必要とさ れてきたが、現在は60分1回の運動と10分6回の運動の減量効果が同じというこ とが分かったので、1日2回ぐらいの10分間の運動と、こまめに体を動かす習慣を 身に付けることが大事」と話している。


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