回診で患者をチェック
栄養サポートチーム
病院に不可欠の存在に

  「病院のご飯、おいしいですか」「不満はないですか」―。患者を回診して栄養状態をチェックする「栄養サポートチーム」(NST)が病院に欠かせない存在になりつつある。
 医師だけでなく、管理栄養士や薬剤師、看護師らがチームを作り、適正な栄養摂取ができるように連携して患者を支援することで、免疫力が上がり院内感染が減少、入院日数も短縮して在宅医療にも結び付くなど、目に見える成果が表れている。日本の医療が置き去りにしていた「栄養」が大きく見直され始めた。
 
 ▽医療の基本
 「現在、NSTを置いている病院は全国で290を超え急増中」と話すのは藤田保健衛生大医学部の東口高志教授(外科・緩和ケア講座)。
 「患者さんの栄養管理は医療の基本で、病院の全職員に必要な知識。NSTにはすべての職種が加わる必要がある」
 栄養の重要性は、日本ではなかなか認められなかった。やっと病院のすべての部署が参加した本格的なNSTが発足したのは1998年。同教授が外科医長として着任した鈴鹿中央総合病院(三重県鈴鹿市)でだった。
 「当時の栄養士はベッドサイドでの直接的な栄養管理にはほとんどタッチせず、病棟での活動ができなかった。最初は5人で勉強会を始めたが、評判がよく、120人まで膨れ上がった時点で、各病棟や部署から1人を兼務で出させる形でチームができた」(同教授)



 ▽在院日数が減少
 チームの仕事は、患者が栄養管理が必要かどうかの判断から始まり、栄養の取り方は経口摂取か、静脈から点滴で行うのか、鎖骨の所から入れる中心静脈栄養かなど、患者に適した方法の提言や指導、栄養管理に伴う合併症の予防や早期発見、さらに医療機器に関することまで幅広い。
 ミーティングでは、栄養管理の基礎知識を勉強したり、NST回診時に問題になった症例の検討や部署間の情報交換などを実施したり。
 週に1度はチームで病棟を回診し患者の栄養状態をチェックする。
 「栄養状態が悪いとどんな治療をしても、回復が遅く、感染症や合併症を併発しやすい。チームが動き始めてたった半年で、平均在院日数が目に見えて短縮し始めたことを知らされ、自分でも驚いた」と東口教授。
 99年には同県内の尾鷲総合病院に移ったが、「高齢の入院患者が褥創(じょくそう)や摂食・嚥下(えんげ)障害、呼吸障害で長期入院し、何年も点滴している人が多くてびっくり」(同教授)。勉強会を半年やってNSTのシステムを立ち上げ、約330人の職員全員が交代でNSTメンバーになった。

 ▽脚光浴びる
 NST導入により、同病院では(1)年間650例あった中心静脈栄養症例が約450例に減少(2)院内感染ではMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)検出数が31%に減り、抗菌薬の使用量は9%に激減(3)高齢者の褥創発生率が15%から3%に減少(4)平均在院日数21・0日から15・9日に減少―など、大きな成果を獲得。
 さらに患者・家族と職員間、職員同士のコミュニケーションがよくなり、病院の経営も改善など、さまざまな効果が得られ、注目が集まった。
 昨年、東口教授は藤田保健衛生大七栗サナトリウム(同県久居市)に移り、ここでは毎週月曜にNSTのミーティングと回診が行われている。
 同教授は「最高の栄養管理は経口摂取。NSTが脚光を浴びた理由の1つは、正しい栄養管理により、徐々に経口栄養による摂取が可能になり、病院から離れられなかった人が帰宅可能になったこと」と話している。



ヘッドラインへ戻る

記事、写真、グラフィックスの無断転載を禁じます。
2004 Kyodo News (c) Established 1945 All Rights Reserved