傾聴で高齢者に元気を
心の介護、支え合いにも
広がるボランティア

 普段話す機会が少ない高齢者に話すことで元気になってもらおうと、専門のトレーニングを受けた聴き手が無償で自宅や施設を訪問する「傾聴ボランティア」が広がっている。聴き手も高齢者が多く、地域の支え合い活動としても注目される。

  ▽死別や子の独立
米国には約30年前に始まったシニア・ピア・カウンセリングというボランティア活動がある。 カウンセリングを学んだ高齢者が、同世代の高齢者の不安や悩みの相談に乗るもので、同じような社会、歴史体験を共有できるため、理解し合いやすいということが特長になっている。
この活動の理念とプログラムを、特定非営利活動法人(NPO法人)のホールファミリーケア協会(東京都千代田区)が導入し、1999年に傾聴ボランティアの養成講座を始めた。

 協会の鈴木絹英理事長は「話し相手がほしい高齢者の心の介護をしたかった。元気なお年寄りには、知識や経験を社会のために役立てて喜びを感じてもらえれば、高齢者の相互支援にもなる」と話す。

 傾聴の対象者は、好きなことをゆっくり話したくても、死別や子供の独立などさまざまな事情から相手がいない人たちで、自宅や施設、病院で生活している高齢者が大半だ。


▽うつが軽く
 ボランティアは主に中高齢者で、女性が7-8割。子育てに区切りがついた女性や定年退職前後の男性が、生きがいのある活動をしたいと携わるケースが目立つ。

 1回の傾聴は30分から1時間。初めはスポーツや世間話などの話題から入るが、数カ月たつとつらいことや自分の人生など内面に関する話が増えてくるという。

 鈴木理事長はこう考えている。「ほとんどの高齢者は話を聴いてもらいたいという願望を持っており、特に、自分が輝いていたころのことを話すと自信を取り戻す。ひとりの人間としてしっかりと生きてきたことを認めてほしいのです」

 ボランティアが気を付けなければならないのは①話に口を挟まない②話をありのままに受け止め否定や反論をしない③解決策や助言を与えない―など。

 認知症や失語症、難聴の高齢者でも、背中をさするなど言葉を介しないコミュニケーションや筆談で対応することもある。

 これまでに、明るくなった、精神的に落ち着く、うつ症状が軽くなったといった声が寄せられている。




▽5千人が受講
 傾聴の実際を見せてもらった。3年前に妻を亡くし一人暮らしをしているさいたま市内の70代の無職男性宅。今回が8回目の訪問になるボランティア、町田実克さん(74)が、無口な方だという男性に囲碁やゲートボール、高齢マラソンなどについて話し掛け、会話が進む。

 約1時間後、男性は「楽しく元気も出てきた。話していると時間がたつのが早い」と喜んでいる様子だった。

 町田さんは男性より年下だが「こちらも元気をもらっている。話を引き出すのが難しいが、沈黙を恐れず、笑みを絶やさないように心掛けています」。正面に座らず、触れられるぐらいの距離で目線を同じ高さにするのもこつという。

 協会の養成講座は定期のほか、地方自治体の依頼で開くことも多い。話し手と聴き手を役割分担して訓練する実技が中心で、これまで全国で約5千人が受講した。協会は電話03(5297)7108(月―金の午前9時から午後6時)。





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