超音波で骨折治療
治癒までの期間40%短縮
効果実証、仕組み研究中

 手術を伴う腕や脚の骨折に対し、微弱な超音波を当てて回復を早める治療法がこのほど、厚生労働省の先進医療に認定された。骨がくっつくまでの期間を約40%短縮と効果は抜群な一方、なぜ治りが早くなるのかの仕組みは、実はよく分かっていない。
 難治性骨折では既に保険診療が認められており、条件付きとはいえ適用拡大され診療費の一部に健康保険が使える先進医療となったことで、さらに普及するとみられる。


  ▽胎児診断レベル
この先進医療の実施施設第1号となった帝京大の松下隆教授(整形外科)によると、超音波の出力は、胎児や肝臓などの診断に使うものと同レベルで、患者は当たっているかどうか全く分からない。1万分の2秒出て1万分の8秒止まる断続的な照射のため「低出力超音波パルス」と呼ばれ「人体への悪影響はない」(松下教授)。
 治療装置の本体は新書本を2冊重ねた程度の大きさで、治療ヘッドを骨折部位に向けて皮膚に当てる。スイッチを入れるとヘッドから超音波が出て、20分後に自動的に停止。当て方などについて医師の指導を受けた上で、装置をレンタルし自宅で治療を続けられる。装置を使う期間は1年以内で、費用は15万円程度という。
 海外のデータでは、骨折して7日以内で、ギプスで固定した患部に行ったところ、すねの骨の場合、くっつくまでの期間は33例の平均が96日と、超音波を当てないケース(34例、平均154日)より38%短縮。手首の骨でも30例、同61日で、当てなかった31例、同98日に比べ、同じく38%短くなったという。

▽刺激条件が重要
 機械的な刺激が治癒に役立つことは知られていた。「折れた脚を松葉づえで完全に浮かせて歩くより、ちょっと接地した方が骨の癒合が進む」(松下教授)のだという。
 超音波も一種の機械的刺激で、動物実験を経て、1983年に海外で臨床応用が始まった。だが、治癒が早まるメカニズムの詳細は「よく分かっていない」と松下教授は明かす。
 骨折は、折れた部分に血腫ができ炎症反応が起きる炎症期、新しい骨(仮骨)が形成される修復期、仮骨が本来の骨へと構造を回復する改変期と、段階を経て治る。
 九州大の神宮司誠也助教授(整形外科)らが行った動物実験では、いずれの時期に超音波を当てても治りが早くなることが確認されており、骨折治癒にかかわるさまざまな細胞が超音波に反応している可能性が高い。
 しかし松下教授は「不思議なことに、連続照射では明らかな有効性はない。パルス照射も、有効性が証明されているのは現在の条件だけ」と説明、メカニズムの解明が課題となっている。


▽早期に開始を
 超音波も万能ではない。松下教授が代表世話人を務める超音波骨折治療研究会の調査によると、効果があった患者の割合は、骨折から6カ月未満で治療を始めた人では90%、6カ月以上1年未満では71%、1年以上だと50%と、時間がたつにつれ減っている。
 骨のつなぎ目に1センチ程度のすき間があったり、固定が十分でなかったりする場合も、効果は得にくいという。
 今回認められたのは手術を伴う四肢の骨折に限られ、骨をいったん切って延ばす骨延長術や、変形した部分を除去してつなげ直す手術は対象外。これらの症例でも骨形成が早くなるメリットは大きく、松下教授は適用対象の拡大を期待している。




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