進歩した急性膵炎の治療
よく飲む人は要注意
重症化は高い死亡率


 宴会の多くなる季節。飲み過ぎた翌日の上腹部痛に注意しよう。これに吐き気、どんどん増す痛みが加わると急性膵(すい)炎の可能性が高くなる。日本では年間約2万人が発病し、重症例では死亡率が極めて高い。重症化すると多臓器不全や敗血症を起こし、集中治療、手術が必要となる。早期の受診が鍵となるが、最近は重症急性膵炎の治療も急速に進歩してきた。 
▽自分の臓器を消化
 急性膵炎の最大の原因はアルコール。東北大大学院消化器外科の武田和憲助教授に よると、半数近くを占める。やはり中年男性が多い。次が胆石で約25%、やや女性 が多い。そのほか高脂血症なども原因になる。
 アルコールは胃液の分泌を促し、食欲を高めるが、同時に膵液の分泌も増加させ る。ところが、アルコールは十二指腸につながる膵管の出口にある「オッジ筋」を収 縮させ、膵液の流れをせき止めてしまう。その結果、膵管の中の圧力は急激に高まる ことになる。
 こうなると、末しょうの膵管が破裂し、膵液が膵臓内に漏れ出して、自分の臓器を 消化してしまうなど、さまざまな影響が生じる。これが急性膵炎だ。
 胆石の場合、胆のうから胆管に出てきた胆石が、十二指腸への出口をふさいでしま うと、胆汁が逆流して膵管に入り込む。膵管の内側が胆汁で溶かされると、やはり膵 液が漏れ始める。
  
▽重症は難病に指定
 年間約2万人の患者のうち、4分の1に当たる約5千人が重症化、この4分の1が 死亡している。重症膵炎は治療が難しく「難病」に指定されている。
 急性膵炎は上腹部痛から始まる。「“胆石かな”と思う人はいるようだが、普通は 胃炎か胃かいようと思うようだ」(同助教授)。
 じわじわとした痛みはだんだんひどくなり激痛に変わる。吐き気も出てくるが、吐 いても楽にならない。
 急性膵炎の診断は、血液中か尿中の膵酵素アミラーゼを測定する。「値が高く痛み がひどければ、まず膵炎」と武田助教授。「この10年、医療関係者の間に膵炎の知 識が普及したため、見落とすことはないだろう」。
 同時にエックス線CTによる画像診断で膵臓を見れば、はっきり診断がつく。
▽効果高い動注療法
 重症の膵炎は、炎症が膵臓内だけでなく、全身の臓器障害や乏尿、ショックなどの 重篤な障害を合併した状態を指す。
 重症の場合、何よりも早い時期の治療開始が救命に結び付く。「重症化の兆候が見 られたら、できるだけ早く集中治療が受けられる施設へ患者を転送する必要がある」 (同助教授)。
 軽症の場合は痛みだけで終わることが多いが、重症になると、全身がむくんで脈が 速くなり、呼吸も苦しくなる。炎症にかかわるサイトカインと呼ばれる体内の物質の 影響で、血管の壁が壊され、水分などが血管から出てしまうからだ。
 しかし、最近はエックス線CTの普及で、素早い対応が可能になった。  細菌感染がある場合などには手術が行われるが、現在は大量輸液や全身管理を中心 とした集中治療が第一選択になっている。
 特に同助教授らが開発した「膵酵素阻害剤動脈注入療法」は死亡率を激減させる効 果を上げている。膵臓の炎症を抑える膵酵素阻害剤を動脈から直接、膵臓に入れる方 法で、短期間で炎症が沈静化し、激しい痛みが消失する。東北大での重症膵炎の死亡 率は40%から10%以下に改善している。
 武田助教授は「続けて飲む人に重症化膵炎が多い。二日酔いの日はアルコールは控 えよう。二日酔いは体のアラーム」とアドバイスしている。


ヘッドラインへ戻る

記事、写真、グラフィックスの無断転載を禁じます。
2002 Kyodo News (c) Established 1945 All Rights Reserved