インスリン注射し50年
声楽家馬場裕子さん

 糖尿病治療で50年以上、インスリン注射を続けている患者を対象に、製薬会社日本イーライリリー(神戸市)が贈っている今年の「リリーインスリン50年賞」を、神奈川県在住の声楽家馬場裕子さん(67)ら3人が受賞した。合併症と闘いながら、馬場さんは「いいことあるわよ、生きていたら」と患者仲間にエールを送っている。

▽29歳で長女出産
 馬場さんが糖尿病と診断されたのは、15歳の夏、高校生のときだった。小学生のころから「水をガブガブ飲み、トイレも近かった」と兆候はあった。「子供だったし、どんな病気か知らなかったせいか、素直に受け入れた。一生インスリンを注射しないといけないと聞き、親の方がショックだったみたい」と振り返る。
 当時は東京に住んでおり、入退院を繰り返しながら高校、大学を卒業。セメント会社に就職するが、会社に病気が知られると首になると思い、しばらくは健康保険を使わずに治療を受けた。
 「人並みではないという劣等感があり、結婚も出産もできないと思っていた」。だが27歳で結婚、妊娠中毒症に苦しみながらも29歳で長女、31歳で二女を、いずれも帝王切開で出産。家事、育児、仕事をこなし「子供の成長を見ながら強くなった」。
 糖尿病は動脈硬化、高脂血症、網膜症など、さまざまな病気を併発しやすい。馬場さんは今、合併症の治療で12の病院に通っている。毎日、自分で血糖値を測りインスリンを4回注射、11種類の薬を飲む。心臓発作に備えニトログリセリン錠も手放せない。

 

▽ 16歳から声楽
 そんな生活の支えの一つが、16歳で始めた声楽という。「スキーも旅行もできない。せめて好きなことをやろう」と習い始め、41歳でソ連(当時)公演、55歳にはCDデビュー。毎年11月に長野県・戸隠高原でコンサートを開く一方、妊婦のための「歌う出産」など四団体で歌唱指導をしている。
 糖尿病の患者と"予備軍"は計1600万人以上とされ、今後も増加するとみられる。その多くは中高年。血糖値の自己管理を十分にできず、失明したり、脚を切断せざるを得なくなったりするケースも多い。
 患者たちに馬場さんは呼び掛ける。「一緒に歩こうよ。大丈夫よ。あなたは、まだ、なったばかりだから」


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