不妊患者の心のケア重要
カウンセリング学会発足
 11月初めに「日本不妊カウンセリング学会」が発足した。生殖医療の技術進歩は驚くほど早いが、かなり複雑になってきていることも事実。「不妊に悩む患者さんが、医師に追いまくられるようにして体外受精をやられる、というのでは困る」と聖路加国際病院産婦人科・生殖医療センターの佐藤孝道部長。設立準備委員長として学会設立に尽力し、同学会の理事長に就任した。  
▽適切な情報を提供
 「カウンセリングは、日本の医療で欠けている“心のケア”の領域。トータルな人間としてのケア。不妊だけでなく、がんでも遺伝の問題でも同じと思う」
 不妊のカウンセリングは、不妊カップルの心身の悩みを受け止め、適切な情報を提供 し、自立的な決定を支援していく役割を担っている。
 「女性の場合、“不妊”によって、自分の存在価値を否定された感じになってしまうことが多い。周囲は悪気はないにしても、“子供をつくらないと一人前でない”という雰囲気の前で、身の置き所がなくなってしまいがち」
 生殖医療の技術の進歩や、不妊治療への保険適用の流れも一般的には望ましいことだ が、そのことがかえって、不妊治療を受けなければならないという“圧力”になることもある。
 「そういうことまでして子供を欲しくないという人もいる。実際には生殖技術の進歩は、不 妊の問題を少しは解決したが、まだほとんど変わってないと言ってもいいほど。現実はそれほど甘くはない」  
▽話をして理解をしてもらう
 不妊治療では、子供ができないまま、お金を使い果たし、夫婦もばらばらになってしまうというケースも見られる。
「大事なことは、治らないこともあり得るという前提で考え、話をして理解してもらうこと。子供ができてもできなくても、“治療を受けてよかった”と、夫婦の間に何か残るようなカウンセリングを目指したい」  不妊カウンセリングは、まだ試行錯誤が始まった段階。医師だけでなく、看護師や臨床心理士などいろいろな人の参加が求められている。大事なことは治療の説明や治療を納 得させるためのものではないということだ。
 佐藤部長は「子供ができなくても、それぞれの人生は大切で意味があるんだということを分かってもらい、時々は病院に来たくなるようなカウンセリングにしたい」と話している。
  


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