ヘルペスウイルスが関与
顔面神経まひの大部分
受診はできるだけ早く

 朝の洗面や朝食時、口に含んだはずの水や食べ物が口の端からこぼれた-。顔の片側がまひしてしまう「顔面神経まひ」は、こうして気付くことが最も多い。従来、冷たい風などの寒冷刺激が一因と考えられていたが、最近はヘルペスウイルスの再活性化が関係していることが分かってきた。全体の7割近くを占めるとみられている。
 ▽細い骨のトンネル
「最近はステロイドの大量療法と抗ウイルス薬の早期投与で、治癒率が非常に高くなった。1週間たつと、傷ついた部分から神経の変性が進んでしまうので、できるだけ早く受診し、治療を始める必要がある」と 山形大医学部耳鼻咽喉(いんこう)科の青柳優教授。
 脳から出た顔面神経は、側頭部の骨の中を縫うように通っているのが特徴で、耳の下で骨の外に出て顔面に向かって伸びていく。この狭い骨のトンネルの中で神経にトラブルが起こると、下流側に「まひ」が出る。
 顔面神経まひは、外傷や腫瘍(しゅよう)、中耳炎など、さまざまな原因で起こる。「約70%は原因不明で、従来は報告者の名前から“ベルまひ”と呼ばれていたが、その大部分が1型単純ヘルペスウイルスの感染が原因であることが分かってきた。まひは突然起こる。残りのうち15-20%が帯状疱疹(ほうしん)ウイルスが関係している」(同教授)。
 このヘルペスは日本人の過半数が感染している。唇に水疱(すいほう)を起こすやつだ。
 ▽ハント症候群
 この2つのウイルスは、感染した後、普段は耳の奥で頭がい底にある膝(しつ)神経節に潜んでいる。疲労やストレス、妊娠などが誘因となって再活性化し、側頭骨の中で顔面神経に炎症や浮腫が起きると、神経が傷ついて、まひが現れる。
 帯状疱疹ウイルスが原因のまひは「ハント症候群」と呼ばれ、耳や口内に水疱が現れることが多い。
 「ベルまひ(大部分はヘルペスが原因)は比較的軽く、その多くは自然治癒するとされているが、ハント症候群は重症になったり、後遺症も重いものになることがあり、鑑別が大事」(同教授)
 まひの程度は、多少随意運動ができるものから、まばたきができず、顔面筋が全く動かない「完全まひ」までさまざまな段階がある。まひの判定は①安静時非対称②片目つぶり③閉眼・口笛-など10項目の顔面運動評価法で行い、完全まひと判定された場合、できるだけ早く入院して治療を受ける必要がある。
 ▽神経変性を阻止
 まひは顔の片側が普通だが、まれに両側同時に起こることもある。
 51歳の男性のケースでは、ある朝、突然顔面の両側が完全にまひ。MRI(磁気共鳴画像装置)で調べると内耳道の所で顔面神経が腫れていることを確認。ステロド投与で4週間後に両側とも回復したが、ウイルスの関与など、原因疾患は特定できなかったという。
 病気の予後を知るためには、いくつかの電気的診断法がある。神経の上流側に電気的な刺激を与え、下流でその反応を見る方法などがあり、正常な神経が残っているほど予後がよい。
 「治療の主眼は、神経変性の拡大を阻止すること。神経の炎症や浮腫を抑えるにはステロイドの早期大量投与が効果がある」と青柳教授。
 「顔面神経まひになった場合、やはり一番よく知っている耳鼻科に受診するとよいと思う。回復期にはリハビリ治療も大事だが、急性期(発病から1-2カ月)に行うとかえって悪化することがある」と話している。
 

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