繰り返しに注意が必要
運動中の脳振とう
経過観察をしっかり

  何かの拍子に頭を打つと、ぼーっとしたり、一時的に記憶が飛んだりすることがある。いわゆる「脳振とう」と呼ばれるもので、すぐに回復すれば、普通ほとんど心配ないが、しばらくは頭痛や吐き気などが起こらないか、様子を見る必要がある。気を付けなくてはいけないのは、スポーツで脳振とうを繰り返し起こす場合で、軽視すると脳への損傷を見逃す恐れがあるからだ。
 
 ▽手掛かりは意識だけ
 「スポーツの現場に検査機器はないので、脳の損傷を判断するには『意識』しか手掛かりはない」と独協医科大の荻野雅宏講師(脳神経外科)。
 「脳振とうは症状がさまざま。コーチや家族から『頭を打った時の対処法を教えてほしい』との声が強かった」と話す。
 学生時代にアメリカンフットボールをやっていたこともあって、日本臨床スポーツ医学会による「頭部外傷、10か条の提言」作成に加わった。
 「スポーツ中の事故で頭を打って意識がなくなったり、まひが出たりなどの重症の場合、多くは内部の血管が切れて起こる急性硬膜下血腫。交通事故などと同様、早く病院に運んで治療するしかない。問題は軽症の場合、現場でどう判断するかということ」(同講師)

 ▽意識の喪失
 その脳振とうだが、実はどういうものか、よく分かっていない。
 脳が揺すられることにより、脳循環の調節が効かなくなったり、血が出るほどではないが、神経の一部が切れたりなどの現象が起きているらしい。
 「スポーツで問題なのは、軽い脳振とう程度では、すぐに競技に戻ったり、次の試合に出たりして、脳振とうを繰り返すことが多い点。しかし、一瞬でも意識を失った場合や頭痛が長引く場合など、脳振とうにはもっと注意する必要がある」と荻野講師。
 繰り返し同じような脳振とうを起こすと、脳が致死的にむくんで死に至る「セカンド・インパクト(2度目の衝撃)症候群」といわれるものがあるという。脳循環に障害が起きることが原因とされてい
 「脳振とう後遺症」というのもあって、1シーズンに2回以上の脳振とうを経験した場合に、イライラや頭痛、めまい、集中力の欠如、疲労感などが起こりやすいと報告されている。

 ▽経過観察が大事
 「一番怖いのは一見、軽症で本人も何ともないが、時間の経過とともに悪化するケース。内部で血管が切れていて、徐々に出血していくために起こる」(同講師)
 例えば13歳の中学生のケース。走り高跳びに失敗して右側頭部を強打し、一瞬ぼーっとしたが、回復し、そのまま歩いて帰宅した。
 しかし、次第に頭痛が出現し、うとうと眠るような状態になったため、病院に運ばれた(12時間後)。頭部のエックス線CTを撮ると硬膜下血腫が見つかったという。
 スポーツ競技では、少し前までは脳振とうで一時的に意識を失っても、その場で回復すると競技を続けることが多かったが、現在は少しでも意識を失ったら、その後の意識状態の十分な見極めが必要とされる。
 「10か条の提言」では、意識を失った場合、秒単位なら競技復帰まで1週間は休む。分単位なら病院に搬送、競技復帰まで2週間は休むなど、米神経学会の指針を基に具体的な指示が図式化されている。
 荻野講師は「競技の種類やルールに違いがあって『提言』はすべてに当てはまらないかもしれない。ただ、脳振とうがあった場合、軽症でも周りの人が時間を追って経過を観察していく必要がある。声を掛けて反応を見ていくことが大事」と話している。


ヘッドラインへ戻る

記事、写真、グラフィックスの無断転載を禁じます。
2004 Kyodo News (c) Established 1945 All Rights Reserved