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脳の動脈瘤(りゅう)が突然破裂するくも膜下出血。死亡率40―60%とされ、助かっても後遺症が出ることが多い怖い病気だ。千葉県救急医療センターの小林繁樹(こばやし・しげき)センター長らは、破裂した動脈瘤に特殊なコイルを詰めて再出血を防ぐ血管内治療と、脳を守るための開頭手術を組み合わせ、重症例の治療に効果を挙げている。
▽3つの峠
くも膜下出血の重症度はさまざまだ。軽い頭痛で受診する人から、いきなり呼吸が止まり、救急車が来る前に死亡する人までいる。軽症では元通り回復することも多いが、重症例ほど死亡率が高く、助かっても重い後遺症が出る。
小林医師によると、くも膜下出血の治療には「再出血、水頭症、血管攣(れん)縮という三つの峠がある」。これらを乗り越えられるかどうかが回復を左右するという。
再出血が起きやすいのは発症から6―8時間後。脳がさらに損傷し、「三つの中でも特に命に直結する」(小林医師)。
出血した血液が、脳とくも膜のすき間に流れ込むと脳脊髄(せきずい)液が循環できずに滞留し、頭蓋(ずがい)内の圧力が高くなることがある。これが水頭症で、脳脊髄液を抜いて圧力を下げる治療が必要になる。
血管攣縮は、出血後4―14日目ごろに脳血管が収縮し血流が悪くなる現象。くも膜の下に広がった出血が脳血管を外側から刺激して起きるとみられ、ひどい場合は脳梗塞(こうそく)を起こすこともある。
▽クリップとコイル
再出血を防ぐ治療法の一つはクリッピング術。頭蓋骨を開け、破裂した動脈瘤の根本を金属製のクリップで挟む。以前から行われ、技術も確立している。
だがクリップで挟むには「脳のしわを分け入り、動脈瘤が見えるようする必要がある」(同)。重症者は治療でさらに脳を傷める恐れがある。薬物治療で手術可能な状態への回復を待つこともあるが、その間に再出血を起こすことも。
このようなケースに有効なのが最近増えてきた血管内治療。太ももの付け根の動脈から細いチューブ状のカテーテルを脳まで挿入し、破裂した動脈瘤にプラチナ製のコイルを詰めて再出血を防ぐ方法だ。
▽双方の利点を
血管内治療は患者の体への負担が少ないのが特徴。だが小林医師らは必要に応じ、開頭手術と組み合わせて治療に当たっている。
51歳の男性患者は検査中に再出血を起こして昏睡(こんすい)状態に。手術が難しいケースだったが、まずコイルで再出血を予防。その後、開頭手術で腫れた脳の圧力を下げ、水頭症を防ぐため管を入れて脳脊髄液を排出した。男性は4週間後、自分で歩いて退院することができたという。
「腫れた脳の圧力を下げたり水頭症を治療するには開頭手術が有効。コイル治療と開頭手術の利点を組み合わせようという考え方だ」と小林医師は説明する。
開頭手術だけだった1996年以前、同センターでは重症例では54%にしか出血直後の手術を行えず、残りは経過観察しかなかった。だが血管内治療を導入した97年以降は76%に積極的な治療ができるようになり、重症例でもほぼ完全に回復する患者がそれまでの5%から17%に増加した。
血管内治療も、コイルを詰めるのが難しい動脈瘤があるなど万能ではない。小林医師は「どちらの治療法にもそれぞれ長所、短所がある。患者の状態によりコイルとクリップのどちらでも選べる体制の整備が大切だ」と話している。
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