大腸がん肝転移に新治療法
化学療法で縮小し手術
「切除不能」例で熊本大

 大腸がんが転移し切除不能と診断された肝臓の病巣を、抗がん剤で小さくしてから切り取る治療が注目されている。化学療法と手術法の進歩によって可能になった手法で、熊本大の馬場秀夫教授(消化器外科)らは昨年5月以降、当初は切除できないと判断された10例に手術を実施。「切除不能と考えられてきた症例の3―4割が治る時代になる」としている。


  ▽6%が限界
大腸がんの細胞は、血管内に入り血流に乗って肝臓や肺に転移しやすい。全国の大学の教室・診療科で作る大腸癌(がん)研究会の治療ガイドラインは、肝臓に転移した場合は病巣の切除を推奨。馬場教授は「手術で完全に取り除ければ、治ったとみなせる五年後の生存率は約40%」と言う。
 一方、病巣が大きいなどの理由で切除できないと判断される症例について、ガイドラインは「現状では治癒させることはできない」としている。化学療法が進み生存期間の中央値は約2年と、10年前より約1年、20年前に比べると約1年半延びたが「化学療法は病巣が大きくなるのを遅れさせ、症状をコントロールするのが目的」との位置付けだ。
 馬場教授も「切除不能例約1500例を対象にした海外の報告では、化学療法で組織学的にがんが消えるのは6%にすぎない」と限界を説明する。

▽3剤併用
 そこで、欧米で始まり熊本大病院が取り組んでいるのが、3種類の抗がん剤を併用するFOLFOX(フォルフォックス)4と呼ばれる投与法で病巣を小さくし、その後に切り取る手法。
 以前から使われている5―FUとロイコボリン、国内では2005年4月に保険適用されたばかりのオキサリプラチンを使い、2週間のうち最初の2日間に投与、これを何回か繰り返す。
 馬場教授らは同年5月以降、肝臓に転移のある37例にFOLFOX4を実施したところ、当初は切除不能との判断だった10例すべてで肝切除が可能になった。これらの患者の当初の病巣は最大で15センチ。途中で薬剤を変更した一例を除き、投薬を6―10回繰り返した。10例全例が生存している。
 海外のデータでは、当初切除不能で化学療法後に切除した患者の5年生存率は39%と、当初から完全に取り切れた場合と変わらない。これに対し、切らない患者は数%止まりだったという。
 こうした治療が可能になった背景には、化学療法に加え、手技の向上で確実かつ安全に手術できるようになったことがある。3次元画像による診断や、ラジオ波を使って組織を凝固させ出血を抑える技術などが一例だ。



▽タイミング
 化学療法後の手術について馬場教授は、タイミングを逃さないことが重要と強調する。「切除可能となったら直ちに切る。また、抗がん剤による肝障害が高度になる前に切る」
 来年には、がん組織に栄養を補給する血管が新しくできるのを阻害する「アバスチン」が、日本でも承認される見通しで、こうした分子標的薬が切除不能例への治療や切除後の補助療法として使われるようになると、肝転移患者の5年生存率は大きく向上すると馬場教授はみる。
 ただ、化学療法が適応となるのは、ガイドラインでは①全身状態が良い②さまざまな臓器の機能が保たれている③転移・再発巣が画像で確認できる―場合としており、身の回りのことがあまりできないような患者は対象にならないという。




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