『うつ病 3』

 怖い精神安定剤乱用 
張賢徳・帝京大助教授

 

―「企業でもメンタルヘルスが言われるなど、うつ病を取り巻く社会情勢も変わってきましたね。

 「メディアを通じた啓発活動で、うつ病のことを知ってもらうという第一段階は達成できたと思います。次の段階は医療のレベルアップ。いかに適切な治療を広めるかです」

 ―具体的には?

 「欧米に比べ、日本の抗うつ薬の使用量は少ないのが現状です。投与が広く、浅くになっていると思います。治療初期1カ月の投与量がその後を左右するとの研究結果もあります。薬が必要な人に十分な量を処方し、その後徐々に減らす。そうしないと自殺率も下がらないでしょう」

 ―抗うつ薬の使い方に問題があると

 「その背景にはもう一つの問題があります。それはベンゾジアゼピン系の抗不安薬、俗に言う精神安定剤です。日本はこの使用量が逆に海外より圧倒的に多いのです。この薬は脳の幅広い範囲に働くため、不安を取り除くほかにも鎮静や注意障害、筋弛緩(しかん)などさまざまな作用があり、転倒や交通事故の危険を増やします。さらに常用量依存の問題もあります」

―常用量依存とは?

 「服用量は増えていかなくても『止めたくても止められない』状態になる中毒状態のことです。欧米では1980年代に問題になりました。しかもこの薬で症状が覆い隠されているうちにうつ病が重症化、難治化することもあるのです」

 ―なぜ使用量が多いのでしょう

 「不安を速やかに取り除いてくれるので、忙しい医師が安易に処方してしまう。『そんなに危険な薬ではない』という過去の認識を持ったままの医師も多いと思います。ただ患者さんも怖さを知って、長期服用を避ける意識を持ってほしい」

 


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