ワクチン接種呼び掛け
インフルエンザ研究進む
流行シーズン間近に

 毎冬のインフルエンザ対策として、日本ではこの数年、迅速診断キットと治療薬が普及したが、専門家は「予防のためのワクチン接種が重要」と強調している。高齢者や乳幼児への有効性に関するデータもそろい始めたという。インフルエンザ脳症の研究や、いつ出現してもおかしくない新型インフルエンザの対策も検討が進んでいる。
 ▽高齢者では助成も
インフルエンザにかかった人が、もしワクチンを接種していれば、成人の場合、8割の発病を防げる有効性があるとされる。同様に65歳以上の高齢者では、45%の発病と80%の死亡を防げることが分かった。2001年から、高齢者の予防接種費用の一部を自治体が負担する制度が始まり、昨シーズンは35%が予防接種を受けている。
 就学前の乳幼児に対する予防接種については、広田良夫・大阪市立大教授の分析で、有効性は20-40%あるとのデータがこれまで出ているが、1歳未満の乳児への有効性は確認されていない。厚生労働省研究班主任研究者の神谷斉・国立療養所三重病院長は「乳児はデータが少ない上、0・1mlという少量の接種量で、効果があるかどうか未解明」という。
 日本では学童への集団接種が行われていたが、予防接種の副作用被害をめぐり国の責任が問われ、インフルエンザは効果に疑問があるとして1994年に任意接種に切り替わった。その影響で、ワクチン接種はゼロに近い水準まで減ったが、インフルエンザ対策が重要との認識が高まり、徐々に増えてきた。
 ▽3千万人分を用意
 今冬に向けて用意されたワクチンの量は、集団接種時のレベルに近い約3000万人分になった。
 現在使われている不活化ワクチンによる重大な副作用は2500万件に1回で、安全なワクチンとされている。
 子供にまれに起きるインフルエンザ脳症は、90年代に顕在化。森島恒雄・岡山大教授(小児科)らの調査で、感染後、血管の細胞の障害で急激な脳浮腫が起きることなどが原因と分かってきたが、未解明な点が多い。
 森島教授は「ワクチンは脳症を防げるのか、防げなくても重症化せずに済むのかを突き止めたい」として、ワクチンが有効かどうかの調査を新たに始める。香港や中国、韓国、タイ、米国とともに、脳症の発生状況などについての国際疫学調査に取り組み、アジア特有の遺伝要因が関係するかどうかも調べる。
 ▽新型にも有効
 米国では5-49歳を対象に、鼻から噴霧する新たなワクチンが認可された。生ワクチンなので発熱などの可能性があり、不活化ワクチンよりは慎重にみるべきだとの意見もあるが、87%の有効性があるとされる。
 森島教授は「有効性と安全性が確認されれば、特に乳幼児にとって将来、重要なワクチンになるだろう」と言う。日本でも導入に向けた検討が始まっている。
 専門家の間で最も懸念されているのは、新型インフルエンザウイルスの出現だ。97年に香港に現れたH5N1という新型は、今年2月に再び出現、これまでに少なくとも7人が死亡。4月には、オランダでH7N7という新型ウイルスにより1人が死亡した。これらが大規模が流行を起こすかは分からないが、いずれ新型ウイルスが大流行するとの見方が強い。
 これに対し、けいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫小児科部長は「現在使われている治療薬のノイラミニダーゼ阻害剤は、新型ウイルスにも有効だ」として、ワクチン開発までの時間稼ぎのために、治療薬を備蓄するよう訴えている。
 

ヘッドラインへ戻る

記事、写真、グラフィックスの無断転載を禁じます。
2003 Kyodo News (c) Established 1945 All Rights Reserved