脳内物質の不調が関与
社会不安障害の治療を

 人前で話したり、字を書いたりすることが怖く、日常生活に支障を来す社会不安障害(SAD)。内気な性格のためと思い込み治療を受けない人が多い。だが脳内 の神経伝達物質の不調が関与すると分かり、10月にはこの病気の治療薬も初め て承認された。
 専門家は「病気と知らず長い間一人で耐えている患者が多い。治療で良くなるこ とを知ってほしい」と話している。

 頭が真っ白に

  「ごく普通の人で、決して病人には見えない。ところが人とかかわる場面で病的な 不安や恐怖を感じてしまう」。多くのSAD患者を診てきた田島治(たじま・おさむ)杏 林大教授(精神保健学)はこう説明する。
 会社の会議で前日からドキドキして頭が真っ白になる。同僚と食事をしようとして レストランの前で恐怖感、嘔吐(おうと)感を覚え倒れそうになる。このような症状が 特徴的だ。
 田島教授は「人前で上がったり、緊張したりするのは誰にもある正常な反応だが 、患者は度が過ぎた恐怖や不安を感じ、大変つらい思いをしている」と指摘する。
 若いうちに発症することが多く「教室で教科書を読んだり、笛を吹くように言われ 、急にドキドキして、体がこわばり、頭の中が真っ白になった。それをきっかけに次 第にエスカレートした」と話す患者が多いという。

 ▽マイナス思考の連鎖

 「この病気が始まるとマイナス思考の連鎖ができてしまう」と田島教授。間違えず にうまくやらなければいけないと思い、「途中で黙ると変に思われるのでは」「ばか にされるのでは」と、不安や恐怖がますます募ってしまうというのだ。
 10月にSADへの適応が承認されたのは、抗うつ薬の選択的セロトニン再取り 込み阻害剤(SSRI)の一つ、マレイン酸フルボキサミン。
 田島教授によると、頭が真っ白になるような体験を重ねると、不安や恐怖などの 感情に関係する脳の扁桃体の神経が過敏になる。SSRIはすぐには効かないが、 神経伝達物質セロトニンを介し、神経が興奮しすぎないよう持続的な変化を起こす という。
 恐怖を感じそうな状況に少しずつ慣らし、対処法を学ぶ認知行動療法という治療 法もあり、SSRIなどの薬物療法とほぼ同等の効果がある。田島教授は「SADは 自然には治りにくく、積極的な治療が必要だ」と強調している。

 


ヘッドラインへ戻る

記事、写真、グラフィックスの無断転載を禁じます。
2005 Kyodo News (c) Established 1945 All Rights Reserved