先端医療研究を患者が支援
研究費難に募金活動開始
決め手欠く肉腫治療で


 血管や消化器、子宮など、さまざまな臓器の平滑筋にできる悪性腫瘍(しゅよう)「平滑筋肉腫」。治療の決め手がないのが現状だが、患者が少なく、製薬会社による研究開発も後回しになりがち。そんな状況に、大阪府立成人病センターが手掛ける先端的な治療法の研究を支援しようと、患者が募金活動に立ち上がった。
 患者や家族は研究支援のため「キュアサルコーマ」というグループを設立、主にインターネットで活動している。米国では患者団体が基金を設立、研究を支援する例はあるが、日本では珍しい。

 手術が頼り

 悪性腫瘍には、体や臓器の表面の上皮組織にできる「がん」と、それ以外の骨や筋肉などにできる「肉腫」がある。
 肉腫は種類が多く、小児にも多いが、患者はがんに比べ少なく、悪性腫瘍全体の1、2%とされる。そのため骨肉腫や白血病などを除き、治療法の研究は進んでいない。
 一般に薬や放射線が効きにくく、手術が頼り。だが発見時には進行していて手術不能のことも多く、術後も再発や転移を繰り返すなど、患者が置かれた状況は厳しい。

 ▽標的遺伝子療法

 患者が注目する治療法研究を進めるのは、同センター研究所病態生理学部門の高橋克仁(たかはし・かつひと)部長と山村倫子(やまむら・ひさこ)主任研究員ら。
 高橋部長らは、分裂を終えた正常な平滑筋細胞にあるカルポニンというタンパク質が、増殖のため分裂を繰り返す肉腫細胞の多くにも存在することを発見。
 遺伝子操作で、カルポニンがあり、しかも分裂する細胞だけで働くようにしたヘルペスウイルスを患部に注射。すると肉腫細胞に入り込んだウイルスだけが増殖を開始、肉腫を壊してくれる。
 従来の同種治療では、安全のためウイルスを増殖できなくしたため思わしい結果が得られなかった。今回はカルポニンを目印に肉腫細胞だけで働くようにした「標的遺伝子療法」で、肉腫があれば増殖が持続し、効果が期待できる。また抗ウイルス剤が効きやすくしており、安全性は高い。
 人の平滑筋肉腫を移植したマウスの実験では80%以上で肉腫が縮小。手術で切除した患者の肉腫を使った実験でも良好な結果が出ている。
 
明日への希望

 当面は平滑筋肉腫と消化管ストローマ腫瘍(GIST)に絞り、科学技術振興機構(JST)やワクチンメーカーと共同で、2007年度の臨床試験開始を目指すが、その前の安全性試験にまだ約4千万円が必要だ。
 このためキュアサルコーマは2年間で5千万円の支援を目標に掲げる。9月からは2本1組のリストバンドを千円で販売。2カ月で約3千組が売れた。「民間ができない研究にこそ国の援助を」と署名活動も進める。
 設立メンバーの一人で東京都内に住む女性は20代半ばで発症。14年間に腹部を5回、肺と脚を各2回も手術し、転移がんを焼くラジオ波治療は数え切れない。「私のようなケースは珍しく、一年以内で亡くなる方もいます。患者は常に死と向き合っているのです」と語る。
 今は得意の英語を生かし、米国の患者団体との交流などに忙しい毎日を送る。「高橋先生の研究は米国の患者も注目しています。治療法のない患者には『明日への希望』なのです」と訴えた。
 高橋部長も「研究に緊張感が生まれ、励みになる。とにかく治療から取り残された患者さんを救いたい」としている。
 事務局がないため、キュアサルコーマへの問い合わせはホームページから。アドレスはhttp://www.curesarcoma.jp/


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