|
胃に風船状の袋を入れ膨らませておくことで、早く満腹になるようにして体重を減らす「バルーン留置療法」に、大分大病院が取り組んでいる。糖尿病などの合併症を持ち、薬や食事療法などの効果がない重度の肥満症患者が対象。5カ月で20キロ以上減量した例もあるという。
▽生理食塩水で
使うのはシリコーンでできた米国製バルーンで、医学部第一外科の北野正剛教授が導入し2004年12月に1例目を行った。
細く折り畳んだバルーンが先端についた管を口から胃まで入れ、管を通して生理食塩水を400―700ミリリットル注入。バルーンが体の前方に当たる胃の前壁と背中側の後壁にちょうど達するサイズまで膨らませる。400ミリリットル入れると直径は約九センチ。管を抜くと接合部が閉まり、中身が流れ出ない仕組み。
これらの処置にかかるのは10―15分だが、経過観察も含め平均で四日間は入院が必要という。
第一外科の太田正之講師は「食べ物はバルーンの上にいったんたまり、すき間を落ちていく。胃の容量を減らすだけでなく、胃からの食べ物の排出が悪くなるので満腹感が早くくる」と話す。
胃に入れておく期間は、大分大では安全性を考え五カ月を限度にしている。治療終了時には再び管を入れ、中に通した針でバルーンを割って食塩水を吸引、縮んだバルーンを取り出す。

▽胃石がヒント
治療対象は、体重(キロ)を身長(メートル)の二乗で割った体格指数(BMI)が35以上で、糖尿病、高血圧、高脂血症、睡眠時無呼吸症候群、膝(しつ)関節症などの合併症がある場合。さらに、薬や食事療法、体重を毎日記録して減量の動機づけをする行動療法で改善しないことも条件になる。
また、BMIが50以上、体重150キロ以上になるような超肥満症の患者では、手術療法の術前治療としても試みられる。
食道裂孔ヘルニアや胃かいようがある人、高齢者などは対象外だ。
バルーン療法は、胃石があると体重が減るとの報告をヒントに、1980年代に海外で始まった。90年代後半に今回のバルーンが開発され、最大で6カ月間の長期留置が可能になった。
大分大ではこれまでに17人に実施、5カ月間入れていた11人では体重が平均12キロ減り、大半で合併症が良くなった。125キロあった四十代男性と130キロの二十代男性は、20キロ以上減量できた。
▽軽い運動OK
一方、吐き気や嘔吐(おうと)が起きて薬を投与したケースがあるほか、不快感で1週間後に中止した例と治療後にリバウンドで体重が増えた例も1件ずつあった。欧州を中心に数万例実施されている海外では、胃かいようや、バルーンが縮んで腸に詰まったなどの報告があるが「発生頻度は低い」(太田講師)。
治療中はサッカーなど激しい運動はできないものの、通常の生活や仕事ができ、大分大では水泳やジョギングなど軽い運動は勧めている。
健康保険は適用されないので入院費を含め約15万円かかる。バルーンは大学の研究費で賄っており、患者が増えた場合は個人輸入となり患者負担が増えそうだという。
太田講師は「間食の繰り返しや食べ過ぎなど、食生活の異常を見直すきっかけにしてもらうのも目的。バルーンを入れれば減量できるというのは安易で、本人の努力がいる」としている。
|