入れ歯のテープで身元確認 
名前と県の番号埋め込み
山梨で5千人以上に実施

 名前や県名を示す番号を印字した小さなテープを入れ歯に埋め込み、身元の特定や確認に生かすネーミング事業を、山梨県歯科医師会が進めている。これまでに5千人を超える患者に実施し、迅速な身元確認につながったケースもある。


  ▽日航機事故で注目
 歯による身元確認は、1985年8月に起き520が死亡した群馬県・御巣鷹山の日航機墜落事故で注目された。傷みが激しい遺体の身元を確かめるのに、歯の特徴が役立ったからだ。
 山梨県歯科医師会でネーミング事業を推進する歯科医師の金山昇さんは「事故をきっかけに、大規模災害のときに歯を個人識別に用いる重要性が全国の歯科医師会で認識され、開業医が組織的にかかわるようになった」と説明する。
 歯は体の中で最も硬いうえ、口の中なので損傷しにくく、世界的にも身元を確かめるのに利用されているという。
 確認作業では、歯の治療痕や詰め物の場所、欠損部分などと、かかりつけの歯科医が保存しているカルテやエックス線写真を照らし合わせる。
 しかし、乗客名簿などほかに身元が推定できる材料や、よほど特徴的な治療痕や歯の状況がある場合を除けば、歯だけから身元にたどり着くことは少ないという。「最終的な裏付けの意味で歯が使われることが多い」と金山さん。
 

▽患者負担なし

 さらに山梨県では、富士山ろくに広がる青木ケ原樹海で毎年、多数の遺体が発見されるため、入れ歯に名前があれば該当者を早く絞り込めると考え、県歯科医師会が主体となり2000年からネーミング事業を始めた。
 同医師会では、公的に決まっている県のコード番号と名前を印字した小さな透明テープを、入れ歯の土台など目立たない場所に埋め込んでいる。テープは長さ1―1.5センチ、幅4ミリ程度で、スペースさえあれば、どんな大きさや形の入れ歯にも入れられる。
 テープの安全性や耐久性に関しては「以前から埋め込みを行っている一部の大学病院と同じ方法でやっている。詳しく検討する必要はあるが、これまで大きな問題は報告されていません」(金山さん)。
 事業には山梨県内の約五十の歯科医療機関が協力し、2000年2月から今年3月までに、埋め込みを希望した高齢者ら5380人に実施。埋め込み技工料の一部として1カ所約500円の補助金を同県歯科医師会が出しており、患者の費用負担はない。。

 
 
▽数時間で特定
 迅速な身元判明につながったのは同県で2件。笛吹市で01年11月に発見された70代男性のケースでは、入れ歯の名前が電話帳で確かめられ約3時間で特定できた。
 03年7月に南アルプス市で見つかった60代男性は、持ち物や体の特徴から身元を確認できるものはなく、指紋や家出人捜索願でも該当者はなかったが、ネーミングが決め手となり数時間で分かった。
 災害に巻き込まれたり認知症患者が行方不明になったりしたときだけでなく、高齢者施設や病院での入れ歯の所有をめぐるトラブル、紛失防止にも役立つと考えられる。 金山さんは「医療機関のコードなどの情報も加えれば、さらに有用性は高まる。普及には、どこが費用負担するのかや実施の指針作りが課題になるだろう」と話す。




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