|
がんの正確な位置把握 国内でも登場へ |
従来の方法では発見が難しかった小さながんも発見できるとして、医療現場に普及し始めた陽電子放射断層撮影装置(PET)。これに、エックス線CT(断層撮影装置)の機能を合体させ、がんの正確な位置まで把握できる複合機が開発された。「いずれは、がん診断の中心 従来の的役割を担うだろう」との声もあり、医療現場の期待は大きい。
▽がんの悪性度も診断放射性同位元素を含む薬剤を患者に注入し、体内での分布を検出器でとらえて画像化する。これがPETの原理だ。がんでは通常、放射性同位元素を含み、ブドウ糖と似た構造のFDGという薬剤を使用する。 がん細胞は、正常な細胞に比べて盛んにブドウ糖を取り込む性質を利用したもので、5ミリ程度の小さながんも検出できる。FDGの集積度などから腫瘍(しゅよう)が良性か悪性かを診断したり、周囲の組織への広がり、転移も把握できる。 1990年代以降、一部の施設で治療結果の確認や転移の検査に利用されるようになったほか、最近は症状のない人の検診を目的にした専門施設もある。 ▽位置を正確に特定 だが、PETの画像は薬剤の集積しない部分は写らない。また、ピントの甘い写真のようになるため、がんの正確な位置を特定するのが難しい。そこで、実際の診断は内臓や血管など体内の詳細な形態が分かるCTや磁気共鳴画像装置(MRI)などの検査結果を併用する。 PET検査に詳しい放射線医学総合研究所(放医研)の吉川京燦(きょうさん)医長は「さまざまな臓器がある腹部などでは、がんの位置の特定には細心の注意が必要だ」と話す。 こうした現場の声を背景に、米GEメディカルシステム、独シーメンス両社は複合機の開発に成功して製品を発売。欧米のほか、アジアでも中国や台湾で使われ始めた。日本のメーカーも開発中だ。 今春、国内で初めて複合機を導入した放医研では、従来のPETと比較して複合機が有用かを評価するための試験研究を行っており、これまでに70人以上の患者を検査した。「最初からがんの位置情報が同時に得られるメリットは大きく、診断の精度は確実に上がりそうだ」(吉川医長)。 ▽検査時間も短縮
検査時間が短縮され、患者の負担が減るのも特徴だ。PET検査では、体内から出てくる放射線が体に吸収され減衰するのを補正するため、事前に10分から20分程度の測定が必要だが、複合機ではCTのエックス線検査で代用できる。一方、FDGは腎臓やぼうこうなどにも集積するため、これらの臓器のがんの診断は難しい。また、胃や肝臓、前立腺などのがんには別の検査の方が有効性が高いとされる。ごくわずかだが、FDGやCTによる被ばくも避けられない。 国内でも複合機は早ければ来年、医療用具として認可される見通しだ。健康な人も対象にしたPETによる「がんドック」を今夏から始めた札幌新世紀病院(札幌市)では、現在2台あるPET以外に、複合機を導入する予定。阿部信彦理事長は「診断のしやすさや時間の短縮を考えれば、近い将来、PET検査は複合機中心に変わるのではないか」と予想している。 |