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近年の手術は患者の負担を極力減らすのが大きな流れ。腎臓や前立腺などを扱う泌尿器科でも、内視鏡を使いながら、臓器を摘出できるぎりぎりの切開ですませる「ミニマム創内視鏡下手術」が普及しはじめた。この手術法を開発した東京医科歯科大の木原和徳(きはら・かずのり)教授の下には、海外からも見学の医師が相次いでいる。
▽チームワーク
以前の開腹手術は腹部を縦に20センチ以上も切開し、患者は長期の入院が必要だった。「昔は安全のためなるべく大きく切れ、と教えられたものです」と木原教授。
しかし患部を十分に見られるのは執刀医だけで、助手や麻酔医、看護師はよく見ることができなかった。しかも泌尿器の臓器は体の奥深くにあるため、手探りの作業も強いられた。
これを解決したのが1990年ごろから始まった腹腔(ふくくう)鏡手術。腹部に開けた3―5カ所の穴から内視鏡や専用器具を挿入、二酸化炭素(CO2)を注入して胃や腸を収めた腹腔を膨らませて行う。
患者の回復が早い上、内視鏡の映像がモニターに映されるため、進行状況は全員が確認でき、真のチームワーク手術が可能な「革命的な手術法」(木原教授)だった。
ただ問題も多い。二次元映像を見て器具を操作するためかなりの習熟が必要で、大量出血などの緊急時の対応も難しい。三年前に慈恵医大青戸病院で起きた前立腺手術での死亡事故以外にも、トラブルは多いという。
▽数カ月で治癒
腹腔鏡手術でも、切除した臓器を摘出するため、最後には切開をする。「その切開創一つで手術できるのでは」と考えたのがミニマム創手術誕生のきっかけだった。
木原教授は1998年に最初の手術を実施。各種の専用器具を考案するなどの改良を重ね、ここ5年間は全例をミニマム創手術で行っている。実績は既に600例以上。患者は全員、無事退院したという。
また腹腔鏡手術は腹腔内を傷つけるため、術後に腸の癒着などを起こすことがある。CO2 ガスによる加圧で静脈血栓やガス塞栓(そくせん)などの重大な合併症を起こす恐れも。
「ミニマム創手術は腹腔内を傷つけず、CO2 も使わない。開腹手術と腹腔鏡手術の長所を取り入れ、欠点を克服した進化形。患者に優しいし、医師には易しい」と木原教授は強調する。
▽安全で経済的
手術ではまず5センチ程度切開し、傷の端から直径約4ミリの内視鏡を入れて行う。モニター画面で全員が手術の進行を確認できる上、執刀医は必要に応じ、患部を直接見ることも可能。「泌尿器科の手術すべてに対応できる」(同)という。
緊急時はすぐに傷口を広げて対処できるし、難易度や執刀医の経験など、状況に応じて切開の長さを調節できるなど、安全性は高い。腹腔鏡のように高価な器具は不要で、費用も安い。傷口が小さいため専用器具は使うが、従来の技術の延長で「標準的な医師なら十分できる」(同)という。
患者は手術翌日には歩行や食事を開始、3日目ごろには退院可能だという。木原教授は普及のため、海外も含め講演に飛び回っており、今では国内の多くの大学病院が採用するようになった。
2年前から導入している金沢大医学部の並木幹夫(なみき・みきお)教授は「ミニマム創手術の方が安全で経済的。そして普通の技術がある医師ならすぐ取り組め、地方医療にもメリットが多い。患者さんにもこういう素晴らしい手術法があることを知ってほしい」と話している。
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