|
がんを40℃程度に温め細胞の死滅を狙う温熱療法(ハイパーサーミア)と、抗がん剤投与や放射線照射を併用し、効果を高める治療法の有用性が報告されている。がん細胞が熱に弱い性質を利用したもので、がんの縮小や消失が期待できるという。
▽放熱できず高温に
がんの治療に熱を用いる手法は古くから知られ、古代ギリシャの医師ヒポクラテスらも関連する記述を残している。
加温が有効な理由は、いくつかある。がん細胞は酸性度が高く熱の影響を受けやすい上、がん組織にある血管は正常な血管と違い熱を加えても広がらないため、放熱が十分にできず高温になりやすい。
また、抗がん剤や放射線で損傷したがん細胞が出す修復タンパク質を、壊す働きもある。
さらに、放射線はがん細胞が特定の増殖周期にあるときは効きにくいが、逆に温熱はこの時期に効く。抗がん剤のがん細胞への取り込みが増えたり、免疫の働きを活発化したりするとの報告もある。
1999年から西出病院(大阪府貝塚市)で温熱療法に取り組むウクライナ出身のバレンチナ・オスタペンコ医師は「ほかの治療と一緒に用いることで相乗効果が期待できる。正常な細胞は、同じように熱を加えても影響を受けにくい。皮膚や皮下脂肪にまれにやけどが起きることもあるが、副作用はほとんどない」と話す。
▽80%で消失
加温には専用の装置を使う。台の上に横になった患者を、鏡もちのような形の電極板で上下から挟み、病巣に向けて電磁波を出す。電磁波によって、がん細胞の中の水分子が急速に動き、摩擦熱が発生する仕組みだ。
装置を製造、販売する山本ビニター(大阪市)によると、電子レンジと同じ原理だが、電子レンジほど高温にはならないという。
同病院では約40-43度に温め、治療時間は40分から1時間。オスタペンコ医師は「抗がん剤との併用では週1回、放射線では週1、2回行うのが目安。保険適用の対象になります」と言う。
同病院と関西医大で、進行した子宮頸(けい)がん患者を対象に行ったケースでは、放射線療法だけを受けた20人でがんが完全に消えたのは50%だったが、温熱療法を組み合わせた20人では80%の好成績だった。
▽脳や目には使えず
山本ビニターによると、こうした温熱療法には全国で少なくとも約60の医療機関が取り組んでいる。西出病院ではこれまでに約400人に実施しており、20回程度受ける人が最も多い。
「抗がん剤、放射線との併用なので、温熱療法自体がどれぐらい貢献しているかは検証しにくい」(同医師)ものの、進行乳がんが消えた58歳の女性や、進行卵巣がんが直径5センチから2センチに小さくなった73歳の女性などの例があるという。
ほとんどの部位のがんに使えるが、熱を加えると危険な脳や目には使えず、手足のがんも温めにくいため難しい。
子宮頸がんが7月に再発し抗がん剤と放射線治療を受けていた神戸市の40代女性は、同病院で温熱療法の併用を始めてから腫瘍(しゅよう)マーカーの検査値が正常になったという。女性は「入院先から2時間かけて通っているが、今後も続けたい」と話している。
|