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進行がん患者の四人に一人は直面する脳転移。転移病巣が多い場合は治療が難しいが、放射線で腫瘍(しゅよう)を狙い撃つガンマナイフによる治療が行われている。実施施設はまだ少なく、残念ながら延命効果も確認されていないが、患者のQOL(生活の質)は確実に向上するという。
▽先進国・日本
脳腫瘍には、そこで発生した「原発性」と他のがんからの「転移性」の二種類がある。しかし原発性は年間一万人に一人と発症率が非常に低く、転移性が圧倒的に多い。
脳に転移しやすいがんの筆頭は皮膚がんの悪性黒色腫。次いで肺がん、前立腺がん、乳がんの順で、全体では約24%が脳転移を起こすとされる。
治療には手術や放射線を一律に当てる全脳照射が行われてきたが、201個の小線源を半球状に設置、ガンマ線を一点に集中させるガンマナイフが治療を一変させた。周囲の正常組織の被ばくを抑え、しかもどんな場所の病巣にも対応できるからだ。
特に日本はガンマナイフ治療の先進国。一昨年までの日本以外の世界の治療実績約18万6千例のうち、転移性脳腫瘍治療は約25%。一方、日本では昨年までの約7万7千例のうちの約54%を占め、昨年一年間では約66%と比率はさらに高まる。
ただ病巣が数個の場合までしか使われず、転移が多い多発性脳転移の治療が課題だった。
▽87個の治療例も
そんな中「数が多くても効果があるはず」とガンマナイフ治療に踏み切ったのが現在、茨城県ひたちなか市の水戸ガンマハウスの脳神経外科部長を務める山本昌昭(やまもと・まさあき)医師。
最初の治療は1996年。患者の転移は37個に上ったが、一つ一つを丹念に照射すると、病巣はきれいに消えた。
同ハウスでは98年から昨年末までに、転移性脳腫瘍治療を1209人に実施。転移が10個以上あった人はこのうち238人で、87個の患者が最多記録だ。
治療できる腫瘍は直径3センチ程度までだが、治療は一日ですむ。治療個所での再発は3%程度。保険も適用され、腫瘍の数に関係なく、治療費は一割負担の高齢者で7万円以下、3割負担の人でも21万円程度。
患者の3分の1は他の場所への転移で治療を繰り返すが、早期に発見、治療することで、脳腫瘍によるさまざまな障害が除かれ、最後まで家事や仕事をする人もいる。
▽徐々に普及も
国内ではまだ全脳照射が多く、まして多発性脳転移のガンマナイフ治療は広まらない。その理由の一つは「照射回数が増えると正常組織も被害を受ける」との不安だ。
しかし他施設で全脳照射を受けた後に再発、同ハウスに治療を受けにきた48人は、全脳照射の一年後に32%、2年後で72%に認知症になりうる脳の広範な障害が磁気共鳴画像装置(MRI)で確認された。「ガンマナイフでは今のところそんな例はない」と山本部長は安全性を強調する。
治療に手間がかかることも普及を妨げている。事前にコンピューターで治療計画を作成し、治療は自動的に進むが、病巣一個に5―10分の照射が必要。数が多いと時間がかかり、同ハウスでは7時間かかったことも。
にもかかわらず国内でもこの治療に取り組む施設も増えはじめた。米国のピッツバーグ大も治療を開始したという。
ただ、がん専門医の中にも、ガンマナイフの効果を知らなかったり、誤解する人も多いという。山本部長は「こういう治療法があることを知らずに、苦しみながら亡くなる患者さんが多いことが残念だ」と話している。
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