進化するペースメーカー 
左右の心室、
同時に刺激
除細動機能付きも登場

左右の心室を同時に電気刺激して心臓の機能を改善する両心室ペースメーカーが、心不全の治療に効果を上げている。心不全患者に起きやすい心室細動を自動的に治療する除細動機能が加わったタイプも、8月から使えるようになった。ペースメーカーの進化は、増加する心不全患者の死亡率改善に役立ちそうだ。


  ▽劇的に改善
 「忘れることができない患者がいる」と話すのは、東京女子医大病院の庄田守男助教授(循環器内科)。
 心筋の動きが極端に悪くなる特発性拡張型心筋症のため、心不全を起こしては入退院を繰り返していた50代の男性のことだ。心臓移植を希望し登録をしたが、臓器提供者が現れないまま2年が経過し、全身に血液を送り出す左心室がほとんど収縮しない状態まで悪化していた。
 ベッドの上から起きあがれないほどの状態で、どんな薬物治療を行っても回復しなかった。ところが、心臓再同期療法を行ったところ「階段を自分でスタスタと上がれるぐらい劇的に改善した」と庄田助教授。
 

▽収縮を同期

心臓再同期療法は、心臓の左右の心室に同時に電気刺激を加え収縮のタイミングをそろえる治療法。従来型が右心房や右心室しか刺激しないのに対し、両心室ペースメーカーと呼ばれる。
 正常な心臓は左右の心室が同時に収縮し、効率よく血液を送り出す。ところが重症心不全の場合、収縮をコントロールする電気信号が乱れ、左右の心室の収縮がずれてしまうことがある。
 このような心臓は「馬車を引く2頭の馬が逆方向に引っ張っているような状態」(庄田助教授)。心筋が収縮しても心臓が胸の中で左右に揺れ動き、心室の体積が効果的に増減しない。このため効率よく血液を送り出すことができない。
 これに対して再同期療法は「逆を向いていた2頭の馬を同じ方向に向ける治療法」(庄田助教授)。この50代男性は治療直後から心臓の機能が改善し、拡張していた心臓の大きさが3年後には正常に戻った。入院の必要は一度もなく、移植の登録を外し、今も元気にしているという。

 
 
▽電気ショック
ただ「問題点が一つだけある」と庄田助教授は言う。治療で心臓の動きが良くなっても、両心室ペースメーカーには不整脈の治療機能はないため、心臓が小刻みに震え血液を送り出せなくなる心室細動などで、突然死を起こしてしまうことがあるのだ。
 この問題に対応するために登場、8月から使えるようになったのが、除細動機能付きの両心室ペースメーカー。心室細動などが起きた際、自動的に検出して電気ショックを与えるなどの治療をしてくれる。
 本体はたばこ箱ほどの大きさで、内蔵のリチウム電池は通常、6―7年持つ。胸部への埋め込み手術は通常のペースメーカーと似ているが、左心室の外側を通る静脈に3本目の電極リードを入れる点が異なる。静脈に電極リードを入れられないケースが約5%あり、手術の成功率は90―95%程度という。
 庄田助教授は「心臓再同期療法で患者の八割程度に心不全の改善効果があり、心室細動などが起きても除細動機能で6―7割は助かる。非常に強力な治療法だ」と言う。






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