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バイオニック医療の新装置 高知大、最先端を走る |
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脊髄(せきずい)に電気信号を送り、血圧を制御する―。麻酔を使った手術中などに急激に血圧が下がった場合、昇圧剤を使っても時間がかかり、なかなかコントロールするのが難しい。こうした際、血圧低下をキャッチし、自動的に電気信号を神経に送り、秒単位で血圧調整が可能な装置を高知大医学部が開発、臨床応用が始まっている。 ▽信号の解読に成功 ![]() 生命科学と先端工学、医学が一体となった「バイオニック医療」と呼ばれる分野で、現在、九州大大学院の砂川賢二教授(循環器内科)が提唱者。日本が世界の最先端を突っ走っている。 「人の体では、頚(けい)動脈の所に血圧を感知する部分があり、脳がその情報を受けて、脊髄から交感神経を通じて、全身の血管を制御し、血圧を一定に保っている」と装置を開発した佐藤隆幸教授(循環制御学)。 国立循環器病センター在籍中、砂川教授らとともに、動物実験で脳が臓器や組織に指令を伝える電気信号の解読に成功。血圧の調整メカニズムを突き止めた。 「血圧感知を半導体センサーに、脳をコンピューターに置き換え、脳からの指令を電気刺激にして脊髄に伝えれば、情報がフィードバックされ、人でも自動的に血圧のコントロールができるはず」(佐藤教授) 工学的手法を駆使して電気刺激のプログラムを作り上げ、「バイオニック動脈圧反射装置」が出来上がった。何かのきっかけで血圧が下がった場合、それに即座に反応して、秒単位で血圧を上げ、元の状態に戻すことができる。 ▽ひざの手術に応用 「まず、手術中の安全装置としての実用化へ。突然血圧が下がる場面で生かせるか、一番厳しい条件を持つ整形外科領域のひざの人工関節手術を選んだ」(同教授) この手術では、大腿(たい)部に止血帯を強く巻き、下肢の血流を遮断し、出血を防いでひざの手術をするが、長時間にわたると下肢の組織が障害を受けるため、1-1・5時間に1回、止血帯を緩めて下肢に血流を送る。 「この時に血圧が急激に低下する。通常、昇圧剤の投与や輸液によって対処するが、血圧が戻るまで数分はかかる」と佐藤教授。 2002年に医学部倫理委員会の承認を得た上、患者の同意も得て、臨床応用がスタートした。 血圧は手首に装着したセンサーで計測、電気刺激のための電極は、硬膜外麻酔を行うときに、脊髄の近くに置いた。 74歳の男性患者の場合、止血帯を緩めると、血圧が20前後下がるのが普通だが、バイオニック装置が自動的に働き、約10秒で元に戻った。 ▽広い応用範囲 ![]() これまでに30人を超える患者に実施し、いずれも血圧のコントロールに成功。副作用もなかった。 佐藤教授は「ほかの手術への応用範囲は広い。次は大動脈瘤(りゅう)の手術で行う予定で、既に倫理委を通り、いつでもできる」と話す。 小型のものができれば、起立性低血圧にも応用できそうだ。 このほか、佐藤教授らは、慢性心不全の患者に対し、首のところの迷走神経を電気刺激することで不整脈を防止し、心臓死を予防する研究なども行っている。 砂川教授は「循環器の疾患は、制御の破たんということが分かってきた。脳と臓器がやりとりする技術が確立しつつあり、米粒大の心臓ペースメーカーの開発なども進みつつある。近い将来、神経リンクを利用して循環器疾患をうまく治療できるようになりそうだ」と話している。 |