大腸がんで在宅化学療法
持続投与で高い効果
生活の質が向上へ


 再発したり、肝臓などへ転移した進行大腸がんの化学療法が、新しい抗がん剤の登場で急速に進歩し、投与法も静脈への急速投与から、少しずつ長時間かける持続投与に変わってきた。これに伴い、在宅での化学療法に取り組む医療機関も出始めている。

 蓄積効果

  「大腸がん治療でも数年前までは急速投与が主流だったが、持続投与の方が治療効果が高く、副作用も少ないことが分かってきた。在宅なら入院より長期間にわたる治療継続が可能で、患者のQOL(生活の質)向上も期待できる」
 在宅化学療法に取り組む都立駒込病院の高橋慶一(たかはし・けいいち)外科医長はこう話し、「この治療法に力を入れる施設は今後、増えるだろう」と指摘する。
 高橋医長によると、化学療法は二種類あり、ボクシングに例えると分かりやすい。一つは強力なKOパンチでがんをノックアウトしようとする方法。もう一つは細かいジャブで、じわじわとダメージを与える方法だ。
 前者が急速投与による全身化学療法で「一度に大量の抗がん剤を投与するため、副作用が強く出ることがある」(高橋医長)。ジャブに当たる持続投与は時間当たりの投与量が少ないため副作用は弱い。治療効果も最初は低いが「次第に蓄積効果が出て最終的には急速投与より高い効果が得られる」(同)という。

 ▽携帯用ポンプ

 高橋医長らは、大腸がんからの多発性肝転移に、携帯用ポンプを使って抗がん剤を肝動脈から1週間連続投与する持続肝動注療法を実施。切除不能だった128例でみると63%に効果があり、病巣が縮小、減少して切除手術に持ち込めた例も18%に上った。
 切除不能なほど進行していると1年もたないことがほとんどだが、この治療により切除できた人の5年生存率は19・6%に達したという。
 持続投与は欧米では5―FU、ロイコボリンと新薬のオキサリプラチンの抗がん剤3種類を2日間投与するFOLFOXという方法などが標準治療として普及しており、日本でも4月から実施できるようになった。
 化学療法は、副作用を薬で抑えられれば、入院せずに外来で治療可能な場合も多い。患者のQOLを重視し、外来治療センターを備えた施設も数年前から増えてきた。  だが外来では2日間もの持続投与は難しい。「入院せずに持続投与するなら自宅で治療することになる」と高橋医長。このため携帯用ポンプを使い、在宅化学療法に取り組む施設が出始めた。

 ▽がんとの共存へ

 高橋医長によると、ポンプはワイシャツのポケットに入る程度の大きさ。内部に風船が入っていて、高くぶら下げなくても圧力で少しずつ薬が流れ出る仕組みだ。
 同病院の肝動注療法では、外来で診察や点滴などをした後、薬剤を入れた携帯ポンプをセットして帰宅してもらう。1週間後に病院でポンプを外し、次の1週間は投薬を休み、これを繰り返す。
 ポンプから肝動脈に薬剤を流す管を設置する簡単な手術は必要だが、治療を受けながら仕事を続けることもできる。
 在宅治療では「重い副作用が出る薬は使わない」「トラブル時の連絡体制の整備」「治療法に対する患者教育」など施設側の準備は不可欠だが、高橋医長は「入院治療の方が良かったという患者はこれまで1人もいない」と強調。「自宅で治療を受けながら、亡くなる直前まで元気に暮らす人も多い。完治は難しくても、がんと共存する方向に治療の流れは変わっている」と話している。

 


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