進む画像による早期診断
アルツハイマー型痴呆
脳血流を解析して判定

 誰しも加齢に伴って物忘れがひどくなることは避けられないが、こうした物忘れが痴呆の始まりのことがある。そのうちで最も多いアルツハイマー型痴呆の早期診断に、日本で開発された脳血流SPECT画像統計解析法(イージス法)が威力を発揮している。
 
 ▽45%近くを占める
 アルツハイマー型痴呆は、脳内でさまざまな変化が起こり、脳の神経細胞が急激に減少、脳が病的に委縮してしまう。症状は、まず物忘れ。最初は古い記憶は比較的覚えているが、新しい出来事が覚えにくく忘れやすいという軽度認知障害が起こる。
 やがて痴呆は①軽度②中等度③重度―と進行し、重度になると、脳全体に委縮を起こして人格が崩壊し、高度の知能低下、物忘れのために生活に支障をきたすようになってしまう。日本では65歳以上のお年寄りでは、20人に1人の割合で、アルツハイマー型痴呆が発症していると推定されている。
 痴呆の中では45%近くを占め、脳血管性痴呆の30%を大きく上回る。
 イージス法は脳血流SPECTの画像を使うのが特徴で、国立精神・神経センター武蔵病院(東京都小平市)のグループが中心になり開発した。

 ▽健常者の血流と比較
 脳血流SPECTはガンマ線を検出するカメラを使って、360度方向から脳内の血流情報を得た後、断層像を作る。脳の血流を反映する放射性医薬品を静脈に注射して、血流によって脳内に蓄積した放射性医薬品を撮影。血流異常のパターンからアルツハイマー型の痴呆かまたはそれ以外の痴呆かの判定をする。
 開発に携わった松田博史埼玉医大教授(核医学)によると、イージス法は、健常者との脳血流分布の差を検出して表示できるため、痴呆の前段階の軽微な脳血流の変化も検出できるようになったという。
 「従来のSPECTやエックス線CTなどの画像診断では中等度程度のアルツハイマー型痴呆からしか診断できなかったが、イージス法は軽度認知障害の状態から診断が可能になった。90%近くアルツハイマー型痴呆のごく初期の状態を判定できる」と松田教授。
 実際にはどの程度の痴呆が診断できるのか。初期には日付や曜日を間違えたり、紹介されたばかりの人の名を忘れるなどの症状が出てくる。年月日、曜日、場所や記憶力や理解力を使って痴呆の進行程度を判定できるミニメンタルテストでは、30点満点で23-24点以下がアルツハイマー型痴呆を疑うが、イージス法を組み合わせれば、この状態から効果的に判定できるという。

 ▽早く発見し対策を
 イージス法に取り組む福岡大医学部の中野正剛医学博士(第五内科)も「痴呆が起こる前の早期に診断できるので、悪化するまで時間稼ぎができる。その間に本人も家族も痴呆に立ち向かうための対策が取れる」と期待を寄せている。
 高齢社会の到来とともに、「もの忘れ外来」や「脳ドック」など老人性痴呆に真正面から取り組む医療施設が増えているが、アルツハイマー型痴呆と診断されるのは、65歳以上の40人に1人程度とみられ、実数の半分程度にすぎない。しかも、治療を受けているのはそのうちの30%とみられている。
 「アルツハイマー型痴呆の進行を遅らせる薬剤はあるが、完全な治療法はまだない。軽度認知障害の状態が数年から5-6年続いているとみられ、早めに診断できれば、それだけ対策も取りやすい」と松田教授は話す。


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