強い縫合で早期回復も
アキレス腱の断裂
目立つ30―40代

 30代後半から40代に目立つアキレス腱(けん)の断裂。年齢的に腱の柔軟性が低下してきたところに、子供の運動会やスポーツ大会で急に運動をして起こることが多い。治療法には、断裂した腱を縫ったり、そのままギプスで固定したりする方法があるが、回復に長い時間がかかるため、最近は腱を強く縫合して翌日からリハビリを始め、早期回復を図る方法も実施されている。
 
 ▽「切れた音が」
 「切れた瞬間は『後ろから足のふくらはぎをけられたような衝撃』とか『腱が切れる音がした』と表現をする人もいる」と北里大医学部の占部憲(うらべ・けん)助教授(整形外科)。
 「実際に断裂していると、腱の断裂部分がへこみ、ふくらはぎを握ってもかかとが引っ張られないので足首が動かない。今は超音波エコーの画像で断裂を確認することもある」と話す。
 患部に痛みはあるが、皮下出血だけで外への出血はない。断裂していても人の肩を借りるなどして足を引きずりながらも歩けるという。
 治療法は通常①切開して腱を縫う②皮膚の上から腱を縫う③そのまま固定する保存療法―の3つあるが、いずれも再断裂する率は低く、長期成績は良いという。

 ▽2本の糸でつなぐ
 まず、切開して腱を縫う場合。「アキレス腱の内側を開き、腱の切れた部分をきっちり寄せて縫う手術。よく行われるのは、切れた腱に糸を靴ひものように掛け、腱の中を2本の糸を通してつなぐ方法」(同助教授)
 通常、術後2週間は、つま先を伸ばしてギプスで固定。その後、つま先を少し戻してギプスを巻き直す。術後4―6週間でギプスを取り、足首を動かし始める。ギプスをスキー靴のような固定装具に代え、5週以降は全体重をかけた歩行を行うという。
 皮膚の上から縫う方法では、つま先を伸ばし、断裂した腱をくっつけた状態にして皮膚ごと縫ってしまう。
 占部助教授は「切開しないことに利点もある。内部の血の塊にはいろいろな生理活性物質があって修復を速める役割をしている。ただ、腱自体を直接見ていないので、本当にうまくつながっているのか確認しにくい。また、アキレス腱の外側に神経が走っているので、縫合時に傷つけたりする可能性はある」と話す。

 ▽半年でスポーツも
 保存療法は、つま先を伸ばし、断裂した腱をくっつけた状態でギプスで固定するだけ。つま先を少しずつ戻しながらギプスを巻き直していく過程は同じ。治るまで数カ月の時間がかかる。
 占部助教授らが行っている強固な縫合は、ギプスによる長期間の固定で関節が動かしづらくなったり、筋力低下を予防するために考え出された。
 主縫合は、腱の中を通常の3倍の計6本の糸を通して切れた部分をつなぐ。その上で、補助縫合として、つないだ部分の腱の周囲を細かく縫う。
 「初期にしっかり縫って、早くから動かす考え方。手術当日は足首を固定するが、翌日からはベッドの上で、足首を自分で動かす。さくに足をかけたりして伸ばし、1週間以内に足首が直角ぐらいまで来るようにして、この時点で体重の3分の1加重を開始、歩行訓練を始める」(同助教授)
 6週までに全体重負荷歩行をして、術後3カ月で、軽度のランニング。術後6カ月までにはスポーツ活動への復帰を許可しているという。
 占部助教授は「最初、損傷した手の腱の治療から出てきた理論をアキレス腱に応用したもの。早くから動かすことで、修復を促進し、筋力も落ちないなどの利点がある。日常生活への早期復帰ができる」と話している。


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