|
歯周病を放置すると、歯槽(しそう)骨など歯を支える組織が徐々に破壊され、ついには歯を失うことも多い。従来の治療では失われた組織は元に戻せなかったが「エムドゲイン」という特殊な材料を使う歯周組織再生法がスウェーデンで開発され国内でも広まってきた。
東京都千代田区のスウェーデンデンタルセンター(弘岡歯科医院)の弘岡秀明(ひろおか・ひであき)院長は「歯周病が進んでもこの再生治療をすれば歯を抜かずにすむケースもある。専門医で適切な治療を受けてほしい」と話している。
▽沈黙の病気
歯周病は歯と歯ぐきの間にプラークという細菌の塊がたまり、炎症が起きる病気。最初は自覚症状がないため「沈黙の病気」とも言われるが、ゆっくり進行し、歯ぐきが赤くなったり、腫れて出血したりする。
炎症が歯肉にとどまるうちは、歯ブラシできちんと磨けば健康な状態に戻る。しかし放置すると歯ぐきの下の方まで細菌が入り込み、歯槽骨などが破壊されて歯がぐらぐらになってくる。
プラークがたまった歯周ポケットの深さが5ミリ以内ならば歯石をかき出すスケーリングという処置ができる。もっと深い場合は歯ぐきを切開して歯根を清掃する手術が必要だ。
このような治療で炎症は治まるが、一度破壊された組織は元に戻らない。「歯根の先端近くまで進行していた場合、普通は歯を抜くしかない」(弘岡院長)という。
▽GTR法
弘岡院長によると歯を支える組織が元に戻らないのは、治療後にできた空間に歯肉が先に入り込んでしまうためだ。
歯周組織の再生法としてスウェーデンでまず開発されたのは歯周組織再生誘導法(GTR法)。歯ぐきを切開して歯石を取り除いてできた空間を特殊な膜で覆う。すると歯肉が入り込まず、骨などの複雑な組織がゆっくりと再生できる。
「GTR法は1980年代に開発され、今では世界中で使われている」と弘岡院長。人体に吸収される膜も開発されているが、通常の膜では取り出すために二度目の手術が必要。膜による感染のリスクもあるという。
一方、GTR法の後に開発されたエムドゲインの主成分は、歯が生える際に重要な働きをする特殊なタンパク質。歯根の表面に塗ると、歯が生える時と同じようにセメント質や歯根膜、歯槽骨などの歯周組織の再生が始まり、歯肉は入ってこれなくなるという。
▽歯根に塗布
治療はGTR法より簡単で、清掃した歯根表面にゲル状のエムドゲインを塗るだけ。後は歯ぐきを縫合し、半年以上たってからエックス線で治療効果を確認する。
弘岡院長が治療したある患者は歯槽骨が破壊され、歯根の長さの3分の1以下に下がり、通常なら歯を抜かなければならないケース。エムドゲインの治療で歯槽骨が歯根の半分ぐらいまで回復、抜かずにすんだ。
効果は患者により差があるが、スウェーデンでの報告でも治療後3年間で歯槽骨が平均2・5ミリ再生しているという。
歯根が複数に分かれた奥歯には使えないなどの条件がある。保険適用外のため自費診療で、治療費は同センターでは一カ所15万―20万円。
弘岡院長は「歯周病防止のため、治療後も定期的なクリーニングが大切。正確な診断や歯磨き指導、治療後の定期的メンテナンスなどをきちんと行う歯科医院で治療を受けて」と話している。
|