体質に合わせピロリ除菌 
遺伝子調べ薬を調節
浜松医大、96%で成功

 胃かいようの原因や胃がんの引き金になると考えられているヘリコバクター・ピロリ菌。複数の薬を飲んで菌を死滅させる除菌療法で、菌の薬に対する耐性と受診者の体質を調べ、それぞれの人に合った投与法を取る治療の有効性が、浜松医大の臨床試験で報告された。


  ▽耐性を獲得
ピロリ菌は日本人の半数程度が感染しているとされ、40歳以上では60―80%。厚生労働省研究班は9月初めに、感染している人はそうでない人より約5倍胃がんになりやすいという大規模な疫学調査の結果を発表している。
 標準的な除菌療法では、抗生物質のクラリスロマイシンとアモキシシリンのほか、この2薬が胃酸で溶けて効かなくなるのを防ぐため胃酸の分泌を抑制するプロトンポンプ阻害薬を、いずれも朝・夕食後の1日2回、1週間服用する。
 1990年代後半には80―90%の除菌率が報告されたが、浜松医大臨床研究管理センターの古田隆久・助教授(消化器内科)は「年々低下し、今では平均で70%ぐらいとのデータもある。菌が薬に耐性を獲得したためです」と説明する。
 深刻なのはクラリスロマイシンで「現在、国内では菌のうち15―30%が耐性。除菌できなかった症例の約54%で見つかった」と同助教授。

▽代謝速度も関係

これに加え、プロトンポンプ阻害薬の効き目が体内でどれぐらい維持されるかが、成否を決める。肝臓の代謝能力が高く阻害薬が体外に速く排出される体質の人は、薬の作用が続かないため胃酸が抑制できず、抗生物質が酸に早く壊されて効果が落ちてしまうのだ。
 代謝速度は、阻害薬を代謝する酵素の遺伝子の型によって異なる。日本人では速い人が約35%、遅い人は約15%、その中間が半数程度。同医大では、遅い人の約98%が除菌できたのに対し、速い人では約73%止まりだった。
 そこで導入されたのが、菌の耐性と薬の代謝速度の違いに応じて投与量や回数を変えるオーダーメードの除菌法だ。
 まず、胃の粘膜や胃液中の菌を採取し、遺伝子を調べてクラリスロマイシンへの耐性の有無を確かめるとともに、受診者から採血し代謝に関する遺伝子を検査する。

 

▽期間、回数を変更
 代謝が速い人は、プロトンポンプ阻害薬の投与を1日3回か4回に増やし、効果を持続させる。クラリスロマイシンに耐性があるケースでは、阻害薬とアモキシシリンの服用を二週間に延長、さらにアモキシシリンは1回当たりの量を少し減らして1日4回に増やすなど、それぞれの患者に最適の方法を選ぶことで薬効を高める。
 浜松医大では2003年から取り組んでおり、年間約50人に実施。これまでにまとめた成績では、標準療法を受けた93人の除菌率は約71%だったが、オーダーメード療法を行った97人では約96%に向上した。
 特に、クラリスロマイシン耐性で代謝も速く標準療法ではほとんどが不成功になるタイプの12人では、オーダーメード療法により全員で除菌が成功した。
 古田助教授は「失敗してまた除菌するのは大変で、何度やっても駄目なこともある。オーダーメードでは検査費が掛かるが、1度でうまくいく可能性が高く、再度の除菌の費用や通院費などを考えると経済的」と話している。





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