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医学の進歩や衛生、栄養状態の向上で寿命が延びるとともに、がん患者の数は着実に増えている。現在、日本人の2人に1人が発症、3人に1人ががんで亡くなるが、2015年には3人に2人が発症、2人に1人が死亡するとされる。
そんな状況の中、養老孟司(ようろう・たけし)東大名誉教授とともに「自分を生ききる―日本のがん治療と死生観―」(小学館)を出版した東大病院緩和ケア診療部長の中川恵一(なかがわ・けいいち)・助教授は「がんとの賢い付き合い方」の必要性を強調している。
▽圧倒的に痛い国
従来のがん治療の主眼は「完治」で、5年生存率の向上を目標に成果を挙げてきた。しかし「がんの増加は高齢化に伴うものなので、このまま生存率が70%や80%に達することはありえない。転移、再発し、分の悪い戦いを強いられる半分の人にどう対処するかが問われている」と中川部長。
そこで問題になるのが、がんの激しい痛みの抑制。しかし日本の患者1人当たりのモルヒネ使用量は欧米の7分の1。医療用麻薬全体では米国の20分の1にすぎず、中川部長は「日本はがんが圧倒的に痛い国なのが現状」と指摘する。
この背景には「中毒になり、使用量がだんだん増え、命が縮む」というモルヒネへの誤解がある。実際は注射でなく経口摂取する場合、血中濃度の上昇は緩やかで、中毒になることはない。痛みがとれ、よく寝て、よく食べられることで、延命も図れるという。
▽熟知は医師の10%
医師が麻薬を使いたがらない問題もある。中川部長が03年に東大病院で行った調査では、多くの医師が末期がん患者治療の困難さを感じていたにもかかわらず、世界保健機関(WHO)が勧める鎮痛剤や麻薬の三段階の使用法の内容を熟知していた医師は約10%、看護師では約5%だけ。「患者の痛みに関心がない、と言われても仕方がない」と中川部長。
急速に普及するがん告知も、若い医師はマニュアル通りに行う傾向があり「告知が酷知になっている」と指摘。現実に直面する患者に、手間はかかっても心理ケアも含め思いやりのある対応をする必要性を訴える。
「がんは老化の一部で、実は優しい病気」。中川部長はこう強調する。痛みさえ抑えれば穏やかな死を迎えられ、時間的な余裕もあるためだ。「本の中で養老先生も指摘しているが日本人は『死は異常なこと』と考えている。そうではなく、自分ががんになったときのことを普段から考えておくべきだ」としている。
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